(やっば。遅くなっちゃったよ)

 

 

12月も後半になってきた頃のこと

 

図書室で勉強をしていたハルヒは、部活時間ギリギリに図書室を後にした。

そして今、音楽室へと続く階段を必死の思いで駆け上がっている所である。

 

前回の騒ぎの件もあって、遅れると何を言われるか分からない。

前回は、のお蔭で回避できたが、今回はそれがない。

 

泣きそうになりながら、ハルヒは駆け上がり続けた。

 

 

ハァ…ハァ…と荒く息をつきながら、音楽室の前まで来ると一旦立ち止まった。

呼吸を整えてから、扉を開ける。

 

 

(―――!?)

 

 

開けた先に見えた光景に、ハルヒは崩れ落ちた。

 

目の前で待ち構えている人達に背を向けて

 

 

 

「「「「「いらっしゃいませ」」」」」
「って、ハルヒか。遅いぞー」
「客かと思ってポジション取っちゃったじゃんか」
「まぁいいじゃないか。」

 

 

 

背を向けている方から声を掛けられる。

茶化すように言う双子を柔らかいトーンの声が制した。

 

 

 

「…確か今は12月中旬だと…」
「ふふん!冷気に恐れコタツに縮こまるなどナンセンス!この完璧な空調設備は何のためだ!」
「…まぁ。こんな風に使うものではないことは確かだよ、環。」
「おおう!、どうしてそのような事を言うのだ!?」
「だって普通のことだろ?生徒が寒さで風邪を引かないためにあるのであって、
 わざわざ風邪引くような馬鹿な格好をする為ではないと思うけど?」
「…まぁ、確かにそうだが……」

 

 

 

遠い目でカレンダーを見ながら呟いたハルヒに環が言った。

ハルヒに同意するように、がそれに続けた。

椅子に座っている環は右斜め後ろ―鳳の前であり双子の間―に立っているを見上げる。

 

ニッコリ微笑んで、正論を並べたに敵うわけがなく、素直に頷く。

 

 

 

「…ま、そう言いつつも、俺もこんな格好してるんだけどね」
「似合ってるぞ、
「…嬉しくないんだけど」

 

 

 

は自分の格好を見て溜息をついた。

そこへ、笑いながら環が茶化すように言う。

ウンザリした顔をしながら、正直な感想をは告げた。

 

南国衣装に身を包んでいる部員たちの中に、もちゃんと居る。

ということは、も環たちと同じ格好をしているわけであって…

 

の方をやっと見たハルヒは、ガックリした。

 

ホスト部一常識人であるはずのまでもが、上半身を露わにしているのである。

基本的には環と似た風の衣装ではあるが、露出は明らかにの方が多い。

 

不満顔の

満足げの顔の環

 

その二人を交互に見比べて、あぁ押し負けたんだな…と直感で思う。

 

 

 

「…あ、もちろんハルヒの分も用意してあるぞ!」
「遠慮します」

 

 

 

「勿論俺とおそろいのv」とニコニコ顔でハルヒ分の衣装を取り出して来た環

それに間髪入れずに拒否をする。

 

その言葉にショックを受けた環が、鳳に泣きつくのを遠回しに見やる。

 

と、そこへが近づいて来た。

 

 

 

「遅かったんだな」
「あ、はい。ちょっと図書室で勉強を…」
「さすが特待生で学年首席。部活に入っても勉強は怠らないんだね。」
「それほどでもないと…そういう先輩はどうなんですか?」
「俺?」

 

 

 

逆に質問を返されて、が自分を指差すと、ハルヒは頷いた。

何故?と目で問い掛けると、頭の後ろに手をやったハルヒが答えた。

 

 

 

「えぇ。2年生の首席は先輩なんでしょう?いつ頃勉強してるんだろうと思って…」
「あー…知ってたのか」
「同じ首席ですから」
「そうか。んー…まあ、そこは秘密ってことで」

 

 

 

一瞬だけ考える素振りを見せるが、直ぐにニッコリと微笑んだ。

腑に落ちない様子のハルヒを置いて、は離れて行く。

 

遠ざかるの背中を見送る。

 

イマイチ行動の読めない先輩だ…と心の中で呟く。

声には出さずにいると、何時の間にか傍に誰かが来ていたのに気がついた。

 

 

 

「まぁ前置きはこれくらいにして……」
(前置き……?)
「ハルヒ。12月といえばなんだ?」
「は?」
「最も輝く大イベントが待っているのだよ!」
「それって…?」
「クリスマスパーティーだよ、ハルヒ」
「え…?」

 

 

 

何時の間にかハルヒの周りに集まっていた環たちが言った。

ハルヒはいきなりのことに呆然としながらも、返す。

最も輝く大イベント…と言われて困っていたハルヒに、助太刀するように戻ってきたが言った。

 

 

 

「クリスマス…パーティー…」
「そう。ダンスを踊ったりご馳走を食べたり…」
「楽しい事ばかりだよ〜♪」

 

 

 

説明をするの横から、ピョコピョコ飛びながら、埴之塚がやってきてハルヒの腕を掴んだ。

急に下に引っ張られたハルヒはバランスを崩しかけるが、なんとかその場に踏み止まった。

そして、埴之塚の顔を見る。

満面の笑みで、本当に嬉しそうに語る埴之塚に、ハルヒも笑顔を向けた。

 

その様子を見ていた環が、「ハニー先輩ずるい…」とか呟いた。

 

はそれに呆れながらも、環を宥めた。

 

 

 

「ほら、環。そろそろお客様も来る頃だよ。」
「……あぁ」
「あーもう!ハルヒ!」
「はい?」

 

 

 

いくら言ってもシャキッとしない環を見兼ねて、はハルヒを呼んだ。

 

埴之塚と話していたハルヒが、埴之塚に何か言ってからコチラにやってくる。

 

自分の隣までやってきたハルヒに、こっそりと耳打ちをする。

聞き終えた後で、不思議そうな顔での顔を見返したハルヒは、環を見た。

 

ショボン…と重い空気を背負っている環に、二人揃って溜息をつく。

 

 

 

「先輩」
「……ん?」

 

 

 

とりあえず、の言う通りにする為、ハルヒは環を呼んだ。

顔を上げた環に向かって、ぎこちない笑顔を向ける。

 

と、途端に元気になった環が、ハルヒに抱きついた。

 

抱きつかれたハルヒが助けを求めるようにを見る。

が、は笑って助け様としない。

 

 

 

『環に、笑顔を見せてやってくれ。ちゃんと助けてやるから』

 

 

 

その言葉を信じてやったのに…

 

ハルヒは逃げるのを諦めると、そのまま環をくっ付けたまま落ちつくのを待った。

 

 

 

「環。もういいだろ?」
「…うむ。」

 

 

 

いい加減飽きたのか、がいつまでもハルヒにくっ付いている環を引き剥がした。

ようやく身体の重みが無くなったハルヒは、一息ついた。

 

に首根っこを掴まれたままの環は、満足げな顔をしていた。

 

 

←第八話  第十話→

 

**途中コメント**
なんだか特定のキャラしか出ていない今回(笑)
そして、何やら繋ぎが可笑しくなってたり…;(汗)
原作沿いで書いてるんですが、原作に無い言葉とか
入れてみて…。
主人公のキャラが変わりつつありますね。うーむ…

06,1,27