「へぇ…それは大変だったわねぇ。鞄がひとりでに池に落ちるなんて、怖い話ね?」
「はぁ…(何故この人が自分に指名を…;)」

 

 

 

部活に遅れてきた三人だったが、が先に鳳に断っていたらしく、特に咎められることなく部活に参加した。

そして今、ハルヒは先ほど会った綾小路と向かい合って座っている。

 

参加した早々、綾小路が指名をしてきたのだ。

断る理由など何処にもなく、ハルヒは接待に応じたのだった。

 

環のときと明らかに態度の違う綾小路に、ハルヒは冷汗を掻きながらも冷静に対応した。

 

その様子を着替えてきたが見つめていた。

 

 

 


「…鏡夜」
「今日はどうしたんだ?三人揃って遅れるなんて。」
「ん。ちょっとね。」
「…アイツか?」
「……うん」

 

 

 

腕を組んで考えていたは、鳳の声で我に返った。

腕を解いて鳳に向き直る。

 

 

 

「…そろそろ尻尾出しそうだぞ。」
「そうか。…というかもう出したみたいだな」
「本当だ」

 

 

 

顔を見合わせて話していた二人は、急に騒がしくなった室内を見渡した。

 

ハルヒが綾小路に何か言ったらしい。

 

ハルヒと話していたはずの綾小路が、他のお客の傍にいって、言いたい放題言っている。

言った当の本人は、訳が分からないといった表情で突っ立っていた。

 

クスリ、と笑ったは、全員に合図を送った。

 

その瞬間、綾小路の怒号が消えた。

 

 

 

「あ、ごめん。」
「手が滑った」
「な…っ!?」

 

 

 

双子がまずうるさい綾小路に向かって、持っていたグラスの中の水をぶっかけた。

水をぶっかけられた綾小路は、驚いたように目を見開いて双子を見ている。

それを見たは、鳳に合図を送り、二人で背後に近づいた。

 

そして、バラバラ…との取った写真の数々をばら撒く。

 

 

 

「――!」
「バレてないとでもお思いでしたか?」
「ホスト部の情報網を甘く見ないで貰いたいね。」
「別件の件の写真も、もちろん押さえてありますよ?」

 

 

 

写真が床に落ちる音でコチラを向いた綾小路に、冷たい目線を投げ掛ける。

鳳が、邪悪な笑みを浮かべながら、言い放った。

その後をが冷たい目をしたまま続けた。

それに更に鳳が続けた。

手には数枚の写真を持って。

 

綾小路は散らばっている写真を見て、更に驚き、顔を青くさせた。

 

そこへ、埴之塚が目に涙を浮かべてやって来た。

 

 

 

「この人怖い」
「――!」
「見苦しいな」

 

 

 

ジッと綾小路を見つめた後に言い放つ。

後に続いて、銛之塚が冷たく言った。

そのあと直ぐに環が綾小路に近づいて、顔を正面から見つめた。

 

 

 

「そうねぇ…君はなかなか綺麗なんだけど…」
「た、環様!!あの子が……っ!」

 

 

 

環になった途端に、他の部員の時とは違う態度を出した綾小路。

冷たい目を環がしていることには気付かず、綾小路はハルヒのせいにしようと必死になっている。

綾小路の言葉には耳を傾けず、環は冷たい目をしたまま言った。

 

 

 

「だけど、顔だけよくても困るんだよねぇ」
「た、環様…?」
「悪いけど、消えてくんない?」
「――!」

 

 

 

悪魔の表情をした環は残酷に言い放った。

環の恐ろしさを目の当たりにした綾小路は、何も言えなくなった。

驚いた表情をしたまま固まってしまった綾小路に、更に追い討ちをかけるように環は告げた。

 

 

 

「うちの部員に手を出す奴は…」
「客じゃないんでね」
「あ……っ」

 

 

 

環の背後からは顔を覗かせた。

そして、環の肩に手を置きながら、言葉を勝手に受け継いで言った。

 

もう何も言えなくなった上に居づらくなった綾小路は、その場から逃げるように走り去っていった。

 

綾小路の走り去っていった方向を見た後には、ようやくいつもの表情に戻った。

 

そして、静まりかえってしまった室内に気付き、苦笑いする。

ポリポリと頭をかきながら、いつもの調子に戻った環たちを見た。

 

 

 

「環」
「ん?、どうした?」
「部活。この状態じゃあ、続けられないよ。」
「んー。そうだな。今日はもう帰って頂くか。」
「分かった。」

 

 

 

一応、部長の指示を煽ったは、お客様に丁寧に断り、帰っていただくように促した。

 

 

 

お客を全部返し、部員だけとなった音楽室。

がお客様を返している間に、ハルヒと環の間で何かあったらしく…

 

 

 

「…ハルヒ。何落ち込んでるんだよ。」
先輩」
「クスクス。ノルマでも増やされたか?」
「グ…」
「その様子じゃ、図星か。」
「…笑わないで下さいよ。」

 

 

 

図星を見事に言い当てられたらしく、ハルヒはぐうの音も出ないらしい。

口に手を当ててクスクス笑っているを、恨めしそうにハルヒは見上げた。

「わ…悪い…」と謝りながらも、笑いは止まらない。

 

笑い終えたは、ハルヒの肩に手を置いた。

 

 

 

「な。あっち見てみろよ。」
「あっち?」
「そう。環の方。」

 

 

 

キョトン、としながらも環の方を振り向いたハルヒは、次の瞬間固まった。

 

ハルヒの学生証を見たらしい環が、驚愕の表情をして立っていた。

 

 

 

「…ハルヒ」
「は…はい…?」
「…お前、女だったのか…?」
「はい。生物学上は一応」
「――!?!?!?」

 

 

 

ハルヒが環の質問に素直に答えた瞬間、環が吠えた。

ハルヒを指差しながら、意味不明なことを叫ぶ。

 

その様子を遠巻きに見るのは、他部員たち。

その中にはちゃんともいる。

 

慌てふためいて何を言っているのか分からない環と

冷静に対応するハルヒを見て、は微笑んだ。

 

 

 

「「先輩は最初から気付いてたんだよねー」」
「あぁ」
「ちぇ。教えてくれれば良かったのに。」
「お前等に教えるとややこしいことになりそうだったからな。」
「「えー」」
「まあ、いいじゃないか。あの二人も和解したみたいだし」

 

 

 

なんとか収まったらしいハルヒたちの方を見て、は言った。

その様子を全員で見て、誰からとなく笑いが出た。

 

 

 


「何?鏡夜」
「今日はお疲れ」
「…おう。鏡夜もな」

 

 

 

近づいてきた鳳に気付き、は鳳の方を見た。

腕を出してきた鳳に、は笑うと、その腕に自分の腕を押し当てた。

 

 

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**途中コメント**
ようやく終わりました。騒動編。
なんだか意味不明な文が続いてしまってますが;
雰囲気で場面を分かって頂けると有難いです。(苦笑)

06,1,10