「いらっしゃいませ、お姫様」
「じゃあ、と環。頼んだぞ」
「オッケ。行くぞ、環…って何してんだ?」
「しっ!」
「?」
ハルヒが雑用からホストになって最初の部活。
早速指名があったハルヒは、女子に囲まれ質問攻めにあっていた。
その光景を見ながら鳳に指名客の名前と席を聞き、片手にお茶を乗せたトレイを持った。
ソファの影からハルヒを見ていた環と双子に気付き、呆れたように声を出す。
に向かってキっと睨んだ環は、唇に人差し指を当て鋭く言った。
そして直ぐにハルヒの方をまた見て、「天然…?」とか呟き出す。
双子と一緒になって、環はハルヒを追って見易い場所に移動していった。
そこには、例の女性が座っていた。
は、環たちを追っていた視線を、その女性へと移した。
の視線の先でその女性は、やってきた環の名前を呼びながら驚いていた。
その声は当然環には届いていない。
その女性は環からハルヒへと視線をやり、恨めしそうな目をした。
しかしそれも一瞬で、すぐさま困ったように環へと声をかける。
(……下手な演技するなぁ…)
はその光景を見て、反吐が出そうだった。
が、今は部活中。
嫌な感情を押さえ込むと、も接待へと向かった。
****************
「あれ?ハルヒ、その指どうしたんだ?」
「先輩。」
「怪我でもしたのか?」
「あ、はい。カッターでちょっと…」
「そうか。気をつけなよ。」
「はい。」
「……」
翌日
部活にやってきたハルヒに声をかけたところで、はハルヒの指先に巻かれている包帯を発見した。
心配して言葉にすると、ハルヒは笑って返して来た。
それに少し違和感を感じながらも、も曖昧な笑みを浮かべ応える。
鳳に呼ばれ、接待に行ってしまったハルヒの後姿を見送る。
(…怪しいな)
見送った後、フム…と呟いて、はポケットの中に手を入れた。
ポケットから出した手には、一枚の写真が握られていた。
その写真には、部活に来る途中に見た光景が映し出されていた。
ジーっと、その写真を眺めた後、は眉間に皺を寄せた。
胸ポケットから眼鏡を取り出し装着する。
(関係あるのかも…な)
ヒラヒラと写真を振ってから、ポケットに仕舞う。
瞳を鋭くさせたまま、双子と一緒に接待しているハルヒを見る。
先ほどの怪我の部分を心配されたらしく、苦笑いをして返しているハルヒがそこには居た。
「。……どうした?」
「!…鏡夜」
「顔が厳しくなってるぞ。何かあったのか?」
「…あぁ。ちょっと気になる事があってな…」
「そうか。」
を呼びに来た鳳は、彼のいつもと違う雰囲気に気付き、問った。
名前を呼ばれた方向を、首だけを動かして振り向いたは相手の名前を口にした。
相手を確認した後、はまたハルヒの方を見た。
両ポケットに手を入れて立っていた鳳は、つられてハルヒの方を見る。
二人の視線の先では、双子当てゲーム(?)が始まっていた。
「…ハルヒがどうかしたのか?」
「……なぁ。ちょっち協力してくんない?」
「協力?何に、だ?」
鳳の質問には答えずに、はハルヒから目を離さずに言った。
疑問がって繰り返し言ってくる鳳に、ポケットから先ほどの写真を取り出し渡した。
写真を受け取った鳳は、「仕方ないな」と苦笑しながら写真を見た。
瞬間、鳳の表情が一変した。
驚愕の表情で固まっていた鳳は我に返り、写真を握り締めたままを見た。
は”いつも”の明るくて、人懐こい表情ではなく、厳しい”仕事”の顔をしていた。
そして、”仕事”の時にしか付けない眼鏡の存在に、その時になってようやく、鳳は気がついた。
「…これ、いつ撮ったんだ」
「ついさっき。部活に来る前に。」
「……これは放ってはおけないな。」
「でしょ。じゃ、協力してくれるよな?」
「…ふう。俺がお前からの申し出を断るとでも?ホスト部の情報網?」
「…そのあだ名だけは、もう止めてくれないかな」
ニっと、意地悪そうな顔をした鳳に脱力し、眼鏡を外し”いつも”の顔に戻ったは笑った。
(何の話してたんだろ)
双子当てゲームに参加しつつ、と鳳のやり取りを見ていたハルヒ。
だが、接待相手である女子生徒に聞かれ、仕方なく双子に目をやった。
ハルヒの視線の先には、ニコニコ笑顔の双子がいる。
はぁ…と溜息をついたハルヒは双子を指差しながら言った。
「向かって右が馨で、左が光」
「「ブブーッはずれで−す」」
「外れてないよ。よく似てるけど、やっぱり違う。」
「「……」」
ズバリ、と言い当てられた双子は言葉に詰まった。
その周りでは女子生徒がハート乱舞しながらハルヒを褒める。
((……その通りだったりするんだよな))
心の中で双子は呟いた。
(…あれ?居ない……)
未だにワイワイ言っている女子生徒に曖昧な笑みで応えつつ、たちが居た方向へ視線をやったハルヒ。
そこにはもう、二人の影は無かった。
不思議に思い首を傾げたが、考えても仕方ないと開き直りハルヒは接待を続けた。
**途中コメント**
騒動までいかなか……った…(力尽きた)
大分遅くなりましたがようやく続きを。
次で、この騒動話は終了します。
というかさせます。意地でも(笑)
あ、ちなみに眼鏡はダテです。主人公、目はいいですよ。
ただ雰囲気だけで…(をぃ)
06,1,1