「皆の衆!本日は庶民ラーメンに挑戦する!」
「……今度は何事」
庶民コーヒーで、庶民の味に目覚めてしまったらしい環
庶民ラーメンを片手に、ホスト部員に向かって言った。
大いに盛りあがるその中で、だけは呆れて腕を組んでいた。
「先生の教えに従うように!」という環の後ろで、ハルヒが助けを求めるように手を伸ばしていた。
が、助けは無く、先生としてハルヒは庶民ラーメンを作るハメになってしまった。
(可哀想に…)
ワイワイやっている輪の中に入って、指導しているハルヒを見ては思った。
離れた所で様子を観察することにしたは、椅子に座った。
その先で、ラーメンやらパスタやらを作り出す。
銛之塚がカヤクのついたフタを持って、ハルヒに近づいた。
それを見たハルヒが親切に説明する。
その様子に感激した環が、ハルヒの顔を自分に引き寄せた。
流石にそれには驚いたも、その輪の中に入った。
「…環」
「おお!。お前も作ってみるといい!」
「や、俺食ったことあるし」
「なんと!前回に引き続きまた!」
「どうでもいいけど、離してやりなよ。じゃないと…」
「うーん。まるで絵にならないね。」
「そうだね光。シチュエーションがまるでなってないよね」
「は……?」
双子が何か言い出す…と続けようとしたは、聞こえてきた声にあーぁと呟いた。
案の定、双子が喋り出したのだ。
長々と話した双子が、両側からハルヒを挟む。
「…まあ君は第一条件すらクリアしてないけどね」
「説明損ってやつ?」
(ならするな)
「うーん…やはり最後はビジュアルになってしまうのか」
双子に同意するように言った環が、ハルヒに近づく。
文句を言いつつ、ハルヒが掛けていた眼鏡を外す。
と、を始めその場にいた全ての者が固まった。
皆が固まった原因であるハルヒは、キョトンとした。
「光!馨!!」
「「はっ!!」」
我に返った環が双子の名前を呼んだ。
呼ばれた双子は、鏡やらカット用のハサミを持って環の後ろに並ぶ。
唖然としているハルヒを双子は椅子に縛りつけ、カットを始めた。
その間に環は鳳と銛之塚に命令をして、制服とコンタクトレンズを用意した。
何もすることがなく、ケーキを食べていた埴之塚の元には向かった。
「ハニー先輩」
「あ、ちゃん。このケーキ美味しいよ。」
「良かったね。」
「皆忙しいんだってー」
「うん、そうみたい。俺もすることが無いし」
「じゃ、ちゃんもケーキ食べる?」
「頂こうかな。」
ニッコリ微笑んで言うと、埴之塚も笑って返した。
お皿に自分が食べていた物と同じ物を載せて、に渡した。
「はい、ちゃん」
「有難う、ハニー先輩」
お皿を受け取ったは礼を言うと、持っていたフォークを頂点に乗っている苺に差した。
差した苺を口に含む。
噛むと、苺の味がジュワーと口内に広がった。
「…美味しい」
「でしょ!オススメだよ〜」
生クリームのたっぷり塗られた生地の方を食べて、感想を漏らした。
の声に反応した埴之塚が嬉々と言った。
は笑みを漏らし、埴之塚を見つめた。
と、急に後ろの方が騒がしくなった。
驚いて、埴之塚と一緒にソッチを向いた。
「へぇ……」
「ハルちゃん可愛いーv」
振り向いた先にあったのは、環がハルヒに抱きついている光景だった。
今まで着ていたダサイ服装から指定制服に着替えたハルヒは、見違えてしまうほど変わった。
ボサボサに近かった髪は、双子の手によって綺麗に整えられていた。
関心したようには言葉を漏らした。
その横で、ウサギのぬいぐるみを抱きしめた埴之塚が笑顔で言った。
お皿を置いて、埴之塚と一緒にその輪に近づいた。
「あ、!見ろ!ハルヒ可愛かろう!?」
「そうだな。確かに可愛いな……当たり前のことだけど」
「ん?何か言ったか?」
「いや?何にも?」
ボソリと最後に付け加えた言葉は、届かなかったらしい。
聞いて来る環に、は笑顔でかわした。
交わしついでに顔を近づけてきた環から離れ、ハルヒを後ろから抱きしめた。
「…!?先輩…?」
「にしても小さいなー、お前。」
「…む。そんなことないですよ」
「そうかぁ?俺と20cmは違うな。お前、何センチ?」
「…155ですけど」
「おっ。ピッタシ20cm差だな。俺、175だもん。」
ポフっとハルヒの頭の上に顎を乗っける。
ウザッたそうな顔をしながらも引き剥がさないのが、ハルヒの良い所なのかなんなのか。
「こぉらッ!!ハルヒから離れろ!」
「え〜。別に環に迷惑かかってないんだから、いーじゃんよ。」
「良くない!!ハルヒもも俺のなの!」
「はぁ?意味わかんないよ、環」
「だー!!言い訳無用!とっとと離れろい!」
「わっ…!」
「ちぇっ」
大声を上げながら間に割ってはいってきた環に引き離される。
ニコニコ笑いながら、ハルヒに抱きついているが気に食わなかったらしい。
離れる前にハルヒの首をしめてしまわないように、先に腕を外しておいた。
だから簡単に離れたのだ。
離れ際に舌打ちしたのが聞こえたのか、環が涙を流しながら勢いつけて寄って来た。
「ー」
「ぅわっ!何泣いてんの!?」
「そんなに誰かに抱きついていたいのなら俺に抱きつけばいい!」
「はぁ!?てか環、俺よりデカイから抱きつきにくいもん。」
「何ぃ!んじゃ俺もよりちっさくなって…」
「なれるか」
グダグダ言い出した環にいい加減ウザクなってきたは、釘を刺した。
グサリ、と突き刺さったらしい環は隅っこの方に行ってしまう。
体操座りをして、「の」の字を書き始める。
「あー。また始まったよ」
「どうすんの、先輩?」
「どうすんのって…また俺が始末すんの?」
「「当たり前ー」」
ススっと両側から近寄ってきた双子に呆れ顔で返すと、声を揃えて返された。
それに溜息をつくと、どんより重たい空気を背負っている環に近づいた。
「環」
「………」
「…あーもう。いい加減にしなよ、環」
「…は俺よりハルヒがいいんだろ」
「…は?何いって…」
「俺に構ってないでハルヒんとこ行けば〜?」
「あのな」
いい加減呆れて来たは、再び溜息をついた。
立ち直る気配のない環の肩に手をつく。
横に並ぶようにしゃがみ込んで、肩に腕を回した。
「たーまーき。俺、ハルヒも大事だけどお前も大事よ?」
「…」
「信じられない?俺のこと」
「……そうじゃないけど」
「んじゃ、いいじゃん。俺、ホスト部の皆のこと好きだし。皆大事なんだよ。環は違うの?」
「…俺も皆好きだけど」
「だろ?んじゃオアイコ。」
「…は?」
「今度、俺の手料理食わせてやるから。な?」
「…」
切り札を出してみたに、環の目の色が変わった。
ピクン、と反応した環が「本当か」と目で訴えてくる。
はそれに対して頷くと、立ちあがった。
「さ、これでもういいだろ?さ、立ち直って。部活の時間だぜ」
「あ、あぁ…」
「んじゃ、今度食いにこいよ。」
「の家に?」
「あぁ。いいぜ。」
「も環も、もういいのか?」
「あ、鏡夜。もういいよ。」
「じゃあ、部活始めるぞ」
「りょーかーい」
重たい空気が消えた環から離れ、鏡夜に近づく。
と環以外はもうすでに準備完了のようだ。
ハルヒまでもが、接待の準備をし終わっていた。
まだしゃがみ込んでいる環の背を軽く叩いた。
「!」
「ほら、環。シャンとしなよ。」
「……分かってるさ」
立ちあがった環の顔は、すでにNo.1ホストに相応しい顔つきになっていた。
それを見たは苦笑した。
**途中コメント**
……なんだか長く続きそうです。
次あたりからあの方の騒動が始まったら…
……いいな……(苦笑)
中々話が進まない…;頑張ります。
05,12,12