「おー。子ブタちゃん、買い出しごくろー」
(ぶた……?)
「おかえり、ハルヒ」
「……先輩。」

 

 

 

環は、お得意様の綾小路と話すのを中断して、戻って来たハルヒを迎えた。

ソファに偉そうに座って出迎えた環とは対照的に、同じく接客中だったは立って出迎えた。

 

「持とうか?」とハルヒの腕に抱えられている袋を片手で持ち上げる。

「え…」と声を出し、自分の腕の中からの腕の中に収まっている袋を見た。

交互に袋との顔を見やる。

 

空いているテーブルの上に袋を置いて、中身を出す。

 

姫の相手をしていた環もやってくる。

と、やってきた環の目に止まったのがあった。

 

 

 

「…あ?何だこれ」
「コーヒーですが」
「何処からどうみてもそうだろ、環」
「…既に挽いてあるヤツか?」
「……は?」
「ではなく、インスタントです」
「インスタント……」

 

 

 

ハルヒの言った単語をボトルを握り締めたまま環は繰り返した。

そんなのも知らないのか?という目をしたの目の前に、更に驚くべき光景が広がる。

 

暫くの間固まっていた環が、我に返り、感激したように声をあげた。

その周りにはいつの間に集まっていたのか、他ホスト部メンバーの姿があった。

 

口々に失礼な言葉を発する面々にが止めようとする前に、ハルヒが切れたようだ。

怒ったように怒鳴った後、環たちに背を向ける。

 

コーヒーのボトルを持って意気揚揚としている環たちを見ながら

隙を見ては、はハルヒの後を目で追った。

 

 

(くっそー…金持ち坊ちゃんズが)

 

 

ムカツキながら、あの集団から離れていると、クスリと笑う声が聞こえた。

笑い声の聞こえた方に顔を向けると、一人の女性が口元に手をやって笑っていた。

 

 

 

「お戯れが過ぎますわね。お口に合うはずありませんのに」
「は?」
「あら、ごめんなさい。独り言よ?」
「はあ…」
「ハルヒ!!こっち来て庶民コーヒーを入れてみよ!!」
「え…」
「皆様お待ちかねだ」
「は…?」

 

 

 

先ほどの怒りも忘れ、ハルヒはその女性を興味無さげに見た。

そこへ、何処か楽しそうな環の声がハルヒを呼んだ。

 

ハルヒが顔を向けると、環の手の先には何故か集団が出来ていた。

 

その中にの姿はない。

 

何処へいったのだろうと辺りを見まわすと、丁度が先ほどの女性に話し掛ける所だった。

 

 

(何、してるんだ…?)

 

 

その光景を不審に思いながらも、環に捕らえられてしまい、仕方なくコーヒーを入れることとなった。

 

 

 

「綾小路姫」
「あら、さま。ご機嫌麗しゅう」
「お蔭様で。所で、先ほど何を言われておられたのですか?」
「…何の事かしら」
「あの子…ハルヒに何か言いませんでしたか?」
「いえ。何も?」
「そう、ですか。失礼しました。」
「そんな事無いわ。さまとお話できて嬉しくてよ?」
「それは有難う御座います。」

 

 

 

優雅に笑った彼女に負けないくらい微笑んだは、頭を下げてその場を離れた。

 

そして、コーヒーの注がれたカップを手にして何やら和気藹々としている集団の中に入る。

 

 

(…あの女には、要注意だな)

 

 

フ、と視線を綾小路に向ける。

目が合わない内に、視線を戻した。

 

 

 

!」
「…どうしたの?やけに上機嫌だな、環」
も飲んでみるといい!中々いけるぞ!!」
「そう。でも、俺飲んだことあるし。」
「なんと!」

 

 

 

ニッコリ微笑んで言うと、環は驚いたように声をあげた。

は冷静に、そんなに驚くこと?と言いかけて、止める。

 

ハルヒにおかわりを頼みに行った環を、微笑ましく思いながら、視線を先ほどの女に戻した。

 

綾小路の傍にもう1人女が立っていて、何やら内緒話をしているようだ。

内容はここまで聞こえてこないが、どうやらこの光景のことについてらしい。

 

は呆れたように溜息をつくと、気付いていないフリをしてハルヒに近づく。

 

 

 

「ハルヒ。俺にも貰えるかな」
「あ、はい。どうぞ」
「有難う。」

 

 

 

皆が持っているものと同じカップを手渡してくるハルヒに、笑いながらお礼を言う。

ズっ…と一口啜ると、庶民的な味が口内に広がる。

 

 

 

「俺は嫌いじゃないけどな…」
「え…?」
「いや…なんでもないよ。」

 

 

 

独り言のつもりで呟いたはずなのに、何故かハルヒには聞こえていたらしく。

キョトンとした顔をして見上げてくるハルヒの頭に手を置いた。

優しく笑いかけながら頭を撫でる。

 

 

 

「ご馳走様」

 

 

 

ハルヒの頭から手を離して、空になったカップをテーブルの上に置く。

カップを片付けようとしたハルヒを制して、置いたばかりのカップを手に取った。

 

 

 

「いいよ。自分で洗ってくるから。他の皆の分も洗ってくるよ」
「あ、あの…ッ」
「いいんだよ、ハルヒ。これは元々俺の仕事だったから。」
「え…?」

 

 

 

驚いたように顔を見上げてきたハルヒに、「ごめんな」と付け加えた。

その言葉の意味をハルヒは理解できなかった。

 

一人で考え込んでしまったハルヒを見て、は苦笑した。

 

ポンっとハルヒの頭に手を乗せて、囁くように言う。

 

 

 

「…あの女には注意しろよ」
「あの女…?」

 

 

 

ハルヒにしか聞こえない声で、そっと呟いた。

その言葉に更に驚いたハルヒが、再びの顔を見上げる。

 

すると、はとある方向を顎で示した。

その方向を見ると、そこに居たのは先ほどの女性。

 

その女性はそろそろ帰るらしく、身支度をしていた。

環がそれに気付いて、見送りに向かった。

 

 

 

「あの人がどうかしたんですか?」
「…嫌でもそのうち分かるよ。とにかく気を付けなよ」
「はあ…」

 

 

 

特に気にした様子も無く、見送っている環の背を見つめるハルヒをは見た。

そこがハルヒの良い所なんだろうけどな…とは内心で呟いた。

 

まぁいいか…と半ば諦めながら、は手に持っていたカップを見て思い出す。

 

テーブルに置きっぱなしの全員分のカップをトレイにのせて、水道に向かった。

 

 

←第ニ話  第四話→

 

**途中コメント**

……文章がおかしいと思います(何)
よけい主人公のキャラが不明に…;;
スランプか…?(汗)
というか話が進まないこと進まないこと…
頑張ります。

05,11,27