『なあ、ホスト部って知ってるか?』

『高等部の須王先輩のだろ?キングとかいう…そりゃ有名だし』

(ホスト部…?高等部の須王先輩…)

『女を喜ばせる天才っつったら、やっぱホスト部キングだよ』

 

 

 

クラブに行こうと教室をでようとした所で、クラスメイトの話が聞こえて来た。

その情報を聞き、1人の少年が南校舎の最上階、北側廊下のつきあたりにある第三音楽室に訪れた。

 

 

(ここか?ここが噂の…?)

 

 

一息ついて、少年は扉の取っ手に手をかけた。

そして勢いをつけて、ドアを押し開けた。

 

 

 

「いらっしゃいませv」
「―!?!!?!?!」
「「…なんだ、ガキか。しかも男」」
「どうした?迷い子か?それとも、我が宮殿に何か―…?」
「…環、なりきりすぎだろう。」

 

 

 

入った途端、いきなり目の前に現れた煌びやかな集団を目の当たりにし、後ろにひっくり返るように少年は後ずさった。

営業スマイルを作って少年を出迎えたホスト部は、少年の行動にそれぞれの反応を示した。

 

 

 

「あ…あんたが…『キング』…?」
「え…?」
「?」

 

 

 

少年を立たせようと、ヤケに長い裾を引き摺りながらは少年に近づいた。

「大丈夫?」と声をかけながら手を差し出す。

少年は、いきなり傍にきたに驚きつつも差し出された手に自分の手を重ね、立ちあがった。

 

そして再び環を視界にいれ、少年は今や誰も呼んでいないであろう名前を発した。

その名前に誰もが耳を疑ったが、一番驚いていたのは環だった。

 

一度目では聞き取れなかったらしく、少年の傍に近寄って耳の側面に手を添えてその場に座った。

再び少年が「キング」と口にする。

それにおもしろ半分でハルヒと以外の部員が「「キング」」と言った。

 

 

 

「…初等部5年A組鷹凰子 嗣郎!!ホスト部キングに弟子入りを志願する!!」
「……へ?」

 

 

 

突然真剣な表情をして環を指差しそう言い放った少年―鷹凰子に、一同は暫し唖然とした。

 

―今ここに、最年少ホスト部見習いが誕生した

 

 

 

************

 

 

 

「まあ…環様にお弟子さんが?」
「ああ…まだ少年だがいい目をしていてね。しかし…なんという運命の悪戯だろう…」

 

 

ホスト部キングに弟子入りをした鷹凰子と共に、本日のホスト部は開始された。

アラビア風の衣装から普通の制服姿に戻った部員は、各々接待を楽しんでいた。

 

その中で弟子をとったキング―環は、鷹凰子を傍に座らせ接待をしていた。

いつものように瞳を潤ませて女子生徒を誉めまくる環を、ジッと無言で凝視する鷹凰子。

その光景は異様とも思えた。

 

 

 

「…すっげー。あんな近くで見学させて…やり難くないのかな?」
「環先輩の場合、あの方がテンション上がるのでは…」
「まぁ…人は見られる距離に比例してより美しくなる、と力説していたからな。」
「となると、放っておくのが1番ってことか。」
「そういうことだ。」

 

 

 

その光景を遠くから見つめながら、そんな会話を交わす。

は紅茶を作りながら、鳳の言う事に賛同した。

 

出来あがった紅茶を専用容器に入れ、カップと一緒にトレイに乗せ持ち上げた。

 

 

(えっと…ハニー先輩の所とモリ先輩の所だったよな…)

 

 

キョロっと辺りを見渡して、埴之塚と銛之塚が何処で接待をしているか確認する。

二人を見つけ一度微笑んでから、歩き出した。

 

 

 

「……っと!あっぶね…」
「…っ!あ…」
「…あれ?鷹凰子くん、どうかした?」

 

 

 

歩き出してまもなく、前方に気をとられていたせいか走ってくる人物に気づくことが出来ず、はその人物とぶつかった。

ぶつかった衝撃でトレイの上の物が揺れ、落としてしまわないように体制を整えた。

 

一息をついたところで、ぶつかった所を見る。

そこには何やら変な顔をした鷹凰子が居た。

に見られ俯いてしまった鷹凰子に、首を傾げた。

視線を鷹凰子の後ろにやると、そこには悲惨な状況が広がっていた。

 

床には紅茶であろう液体の水溜りと食器の破片が散らばっていた。

その直ぐ傍には、先日取り寄せたばかりの新作カーテンであろう液体を吸って一部茶色くなった布地が置いてあった。

床から視線を外すと、そこには真っ青な顔をしたハルヒと環と双子、何やら計算している鳳が立っていた。

少し奥に視線をやると、静かに佇んでいる銛之塚にしがみ付いている埴之塚がいた。

 

はため息をついた。

そして、未だに傍で俯いて佇んでいる鷹凰子に視線を向ける。

 

 

 

「……この状況は?」
「………」
「君が……原因?」
「…っ!」

 

 

 

静かに問い掛けると、一回目は無視してるようで何も言わなかった。

その反応に今一度溜息をついて、もう一度聞いた。

…少しばかり、声のトーンを落として。

すると、相手はビクリと肩を震わせて怯えた表情で顔を上げた。

 

ようやく顔を上げた相手に、は微笑んだ。

その行動に相手―鷹凰子はキョトンと間抜けな顔をした。

それに更に笑うと、は目線を合わせるようにその場にしゃがみ込んだ。

驚き後ずさろうとする鷹凰子の肩にそっと手を置く。

 

 

 

「あのね。悪いことをしたならちゃんと謝らなきゃいけないんだよ。それが例え自分は悪くないことだとしても。」
「………」
「一先ずは、鏡夜や環たちに謝ってもらえないかな?これじゃあ部活にならないしな。」

 

 

 

通じているのかいないのか

相手がどうとったかなんてことは、には分からない。

 

 

第ニ十八話  第三十話

 

**途中コメント**
さてさて。次のお話に入りました。
前回の更新より約一ヶ月経ちました…(汗)
とりあえず一部原作から離れてしまっているので、
次の話から元に戻せたらいいと思ってます。

というか今回の話は主人公名前呼ばれてないなぁ…

06,11,5