「……疲れた…」

 

 

 

食堂の清掃を終えたホスト部員は、部室である第三音楽室へと引き上げていた。

全員が全員、慣れないことをして疲れ果ててしまっていた。

環と埴之塚なんかは机に突っ伏してしまっている。

はというと、日頃より掃除し慣れていることもあって、カチャカチャと音を立てながら人数分の紅茶を作って運んでいた。

 

 

 

「はい、環。」
「…うむ。」
「ハニー先輩はケーキと御一緒にどうぞ」
「わーい♪ちゃん、ありがとーvv」
「ハルヒもケーキ食べる?」
「あ…はい。頂きます。」

 

 

 

鳳の前に紅茶を置きながら、ハルヒに顔を向ける。

ハルヒの返答に笑顔で返しながら、ケーキを乗せたお皿と紅茶をハルヒの前のテーブルに置いた。

 

全員配り終えると、は環とハルヒの間に椅子を持っていって座った。

 

 

 

「…にしても、奴らのせいで俺達の方が憔悴しきっている気がする…おかしい…」
「まぁまぁ。」
「…この状態が続くようなら、兄弟愛設定も変えざるをえないが…指名率ダウンは確実だな。
 ペナルティはおいおい考えるとして……ああ、ハルヒ」
「はい…?(物凄く嫌な予感が…)」
「何も責任を感じる必要はないんだよ?たとえ元凶が心ないお前の一言だったとしても…ね?」

 

 

 

「食堂の掃除くらい全く気にしてないしね…?」と言っているものの、その顔は紛れも無い殺意を持っていた。

背後に真っ黒い空気を漂わせながら黒い微笑みで言う鳳に、誰もがこの人には逆らうまいと思った。

 

 

(明らかに食堂掃除したこと気にしてるじゃないか、鏡夜の奴。)

 

 

は苦笑しながらその様子を見ていた。

 

 

 

「でもさぁ…ヒカちゃんとカオちゃんがケンカなんて初めてだよねえ」
「…そうだな」
「え?そうなんですか」
「僕、幼等部の時から知ってるもん。喋ったことないけど、いっつも2人だけで遊んでたしねえ」
「そういえばそうだな。いつも一緒で喧嘩してたことなんてなかったな。」
「ああ…俺は中等部からしか知らないけど、かえって浮いてたよな。」
「そうそう。あの2人、自分達以外誰も寄せつけないって感じで。今より数倍、性格歪んでたし」
「…環先輩と先輩がそこまで言うほど凄かったんですね。」

 

 

 

昔を懐かしむような目をして語ると環に、ハルヒは意外性を感じていた。

 

 

 

「そう考えりゃ、喧嘩なんていい傾向なのかもな。」
「だね。少しは『世界』が広がってきてるって事じゃないのかな?」
もそう思うか。では、この際このままほっとくのが一番……」
「……あ!!環、足元…っ!!」
「ん?……うお!?」

 

 

 

ハルヒの頭を撫でて歩き出した環に、は慌てて声をかけた。

不思議そうな顔をして振り向いた環だったが……既に遅かったらしい。

 

ビュ…と奇妙な音がして無数の槍が環目掛けて飛んで来た。

慌てて避けた環の後ろで、物陰に隠れていた双子が舌打ちをして走り出した。

その後を、「やっぱ制裁!!」と叫びながら、環が追っかけて行く。

 

 

 

「うわー……槍なんて何時の間に仕掛けてたんだろ…」
「そういう問題じゃないだろう、。どうするんだ?」
「うーん……そうだなぁ…って鏡夜、ハルヒは?」
「……いないな。」
「ハルちゃんなら、タマちゃんたちを追いかけていったよー?」
「…本当、ハニー先輩」
「うん。僕見てたもん。」

 

 

 

じゃあ止めて下さいよ…という言葉をなんとか飲み込むと、は環たちが消えていった方へ走り出した。

 

 

 

**************************

 

 

 

「……で?結局なんだったわけ…?」
「「だからー、喧嘩なんて嘘。演技だったわけ。」」
「何の為に?」

 

 

 

追い掛けていったがその場に着いた時には、既にもう事態は既に丸く収まっていた。

環の話によると、ハルヒが二人を止めたらしい。

しかし、その止めた本人は跪いて暗い雰囲気を漂わせていた。

その横には双子による攻撃を大分受けたらしい環が倒れていた。

はため息をつくと、腰に手を当ててソファに座らされている双子を見下ろした。

双子も双子でいつのまにかいつもの双子に戻っていた。

 

 

 

「「だからー、ハルヒんち行きたいが為に台本まで用意してやったんだってー」」
「…その為に環や俺達に迷惑をかけたわけね、お前達は。」
「「そーゆーことー」」
「あ、ていうか先輩、その頬どしたの?」
「珍しいよね、先輩が怪我するなんて」
「…光、馨」
「「何?」」

 

 

 

無邪気に見上げてくる双子に、は最高にいい笑顔を作った。

それに双子だけでなく、周りにいた環たちも一斉に固まった。

鳳並みの黒いオーラを背後に纏ったは、いつもの調子で言った。

 

 

 

「二人とも、暫くはペナルティとして俺の家への出入り及び手作りの物を食することを禁止するから。そのつもりで…ね?」
「「……はい」」
先輩、暫くってどれくらいですか?」
「ん?そうだなぁ…1ヶ月くらいかな」
「1ヶ月…ですか」
「うん。短いかな?」
「そうですね。もう少し長くてもいいかなって自分は思います。」
「そうか。ハルヒがそう言うなら、もう少し長くしようかな。」

 

 

 

ニコっと微笑んでハルヒの質問に答えた

 

の後ろにある黒いオーラに気付いていないのか、はたまた自分も同じ心境なのか

ハルヒは物怖じせずに、寧ろ楽しんでと会話していた。

 

その光景を残りの者たちは唖然と見遣った。

そして、誰もがこの二人にも逆らってはいけない、と思った瞬間でもあった。

 

 

 

【暇な双子ほど悪魔なものなし…及び怒らせたは敵に回すべからず】

 

もう一つ、新たな教訓がホスト部に出来あがった。

 

 

第ニ十七話  第ニ十九話

 

**途中コメント**
これにて双子喧嘩話はおしまいです。
うん。色々間違っていることは知っているよ?(笑)
双子を止めるのは主人公にしようと思っていたのですが。
それじゃあハルヒの家に行く話が書けなくなってしまうかもしれないので
急遽原作通りに変えました。
静かに怒っている主人公が好きなんです。私は。
そして環が謝らせる暇も無く、双子は主人公の地雷を踏んだのでした。(笑)

06,10,8