【暇→機嫌最低のち絶交】
また新たな方程式がここに生まれた―
「ハルヒは僕と一緒に行くんだよ」
「いや、僕とだよ」
「……」
「その手、離せよ」
「そっちこそ離せよ」
昨日、絶交宣言があってから凄く険悪になってしまった常陸院兄弟。
その間には、運悪くいつもハルヒが挟まれていた。
バチバチとハルヒの上空で火花を散らす双子に、周りは少しばかり怯えた表情をしていた。
二人がこうなった原因を作ったであろう張本人であるハルヒは、深いため息をついた。
(…いつまで続くんだろう…)
未だに睨み合いを続ける二人を見上げながら、ハルヒは再度ため息をついた。
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「「Aランチ…は止めて、やっぱBのパスタとDのサラダとコーラ」」
「「「「おぉ…ハモリだ」」」
「「…Dのカッペリーニにバルバリー鴨とフォアグラのポワレパリグーソース添え!!!」」
「なんか騒がしいと思ったら…まだやってたのか、あの二人は」
「ったく…部の恥だな」
「あ…先輩、それに皆さんも…」
「おvvハルヒどちたのーv学食で会うなんて珍しー♪俺に会いにきたにょー?」
「イエ。二人にひきずって来られただけで、環先輩に会いにきたわけじゃありませんので」
「ガーン!!」
「にしても、ハルヒがここにいるなんて本当珍しいよな。いつもは弁当だろ?」
「あ、はい。いつもは教室で食べてて…」
学食に来てみれば、また双子が張り合っているらしい声が聞こえてきた。
埴之塚が止めようと間に割ってはいっていったが、火に油と言った感じになってしまっていた。
喧嘩していても最後まで見事なまでにハモッた双子は、睨み合いを始めた。
はため息をつくと、辺りを見渡した。
と、いつもは見掛けない人物―ハルヒを発見し、環たちと一緒に傍に行った。
ハルヒは困った顔をして、手には弁当箱を持ってその場に立っていた。
話しながら近づいたせいか、たちの声に気付いてハルヒが顔を向けてきた。
環以外の全員が呆れた表情で、未だに睨み合いを続けている双子を見つめる。
は傍らでハルヒの一言によってダメージを受け落ち込んでいる環の肩に腕を回した。
「ほら、環。いつものことだろ?いい加減慣れないと」
「……お前はいーよな。ハルヒに懐かれてて…」
「そういう問題じゃないと思うけど…」
「じゃあどういう問題なのだ?!」
「…環まで不機嫌になってどうするんだよ。今はアイツらを止める方が先決だろ?」
明らかに正論を言ったに、環は何も言えなくなった。
少し拗ねている環を見て、は苦笑した。
二人がそんなやり取りをしている間に、双子は睨み合いを止めていた。
そしていつのまにかハルヒは光と一緒に席を取り、食事を取り始めていた。
隣を見れば、『ハルヒのお弁当』という単語を聞いた環が、何やら赤い顔をして胸元を押さえていた。
その横で鳳が素知らぬ顔で返答し、注文をしている。
その光景をみては再び苦笑すると、「BのパスタとDのサラダ、それとコーヒーを」と注文した。
注文の品を受け取ったは、辺りが騒がしくなっていることに気がついた。
(嫌な予感……)
そう思いながら、恐る恐る騒がしい方に視線をやる。
と、そこにはやはり思い描いていた通りの光景があり、は頭を抱えた。
食べ物を粗末に扱う双子を止めようと、騒ぎの原因である集団に近づこうとして歩を止めた。
シュっと鋭い音がして、何かが顔の真横を通り過ぎていった。
目の前にはリンボーダンスのポーズをしている環。
頬を温かい何かが伝うのを感じた。
そして後ろでからボチャっと水に何かが落ちる音とバシャと水が何かにかかる音が聞こえて来た。
(…あーあ…)
確か後ろには食事をしている教頭がいたような…
頬を伝う赤い液体に触れながら、はこれから起こることをぼんやりと考えた。
「……主犯はどなたかね?」
教頭の静かな声が食堂に響き、原因である双子が両脇から環を挟んで環を指差した。
席を立った教頭は、環の傍にいくと説教を始めた。
環はその場に正座し、大人しく説教を聞いている。
辺りを見まわせば、そのすぐ傍にいたはずの双子の姿は何処にも無かった。
やられた…とは額に手をあてると、ため息をついた。
そして怒られて縮こまっている環に同情のような視線を投げ掛けた。
一通り怒られた後、食堂の掃除を言い渡された環たち。
放課後、食堂の掃除をするホスト部員たちの中に、双子はもちろん居なかった。
「何故俺たちが……」
「しょうがないんじゃない?部員の責任は部全体の責任となるわけだし…」
「そういうが、お前も納得はいっていないんじゃないか?」
「…そりゃね、俺は騒ぎに関係ないのに掃除させられてるわけで?おまけに投げられたフォークで怪我までしちゃうしさ」
「あぁ…光たちが投げて環先輩が避けたヤツですね」
「そ。あそこで環が避けなければ良かったのに。そしたら、この事態も避けられてたと思うよ。な、鏡夜」
「そうだな。少なくともここの清掃をすることは無かっただろうな。」
「お前等…!なんて薄情な…!!じゃあ、あそこで俺はどうすればよかったのだ!?」
「うまくキャッチしてくれれば良かったんだよ。例えそれで手の皮が剥がれたとしてもね」
泣きそうな顔をして反論してきた環に、は黒い微笑みを向けて言った。
ヒ…とその顔を見た環は短い悲鳴をあげて体を震わせた。
(…ま、そこまで怒ってはないんだけどね。)
ブルブルと恐ろしい物でも見るかのような目で見てくる環の頭を叩いた。
今度は驚いた表情で見上げてくる環に、笑みを向ける。
「冗談だよ、環。だから、そんな危ない人を見るような目するなよな」
「……本当か?」
「本当だよ。それかすっただけで別にそこまで痛くないしな。」
「…後でアイツらには謝らせるから」
「え?別にいいよ。大したことじゃないしな」
「いや!アイツらには絶対言い聞かせるからな!!」
「え…ちょっ…環?!」
肩に手をおいて揺さ振ってきた環には慌てて声を出した。
こういう強引な所は昔から変わっていないな…なんて
思考の片隅で思いながら
**途中コメント**
久々の更新で失礼します。(平謝り)
久々すぎて主人公の口調等を忘れかけていました(滝汗)
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
06,10,8