【常陸院兄弟に暇を与えるべからず】
ホスト部に新たな教訓が生まれようとしていた――
「…環っ!!待てってば!」
「待てるか!――光!馨!!」
「「何?殿、先輩まで」」
いきなりキレて教室から飛び出していった環を追い掛けながら、は環にストップをかけた。
しかし、キレている環はの言葉に耳を貸さずに、前方を物凄いスピードで駆けて行く。
暫く走っていると、前方の環がようやく部室の前で止まった。
と思ったらすぐにドアを開き、そこにいるであろう人物たちの名前を叫びながら、飛び込んで行った。
その後すぐに入ったの目には、パソコンの前に座っている双子が映った。
「部のHP管理は真面目にやるという条件で任せたんだったなぁ…?」
「ハァ〜?ちゃんとやってますぅ」
「だから昨日だって明け方までかけて…」
「?―!?」
「「ハルヒの合成写真作ってたんじゃん。懐かしいフレーズにのせて」」
環がキレている理由を知らないは、双子の間に割って入り、パソコンの画面を見た。
―瞬間、驚きに目を見開いた。
が驚いたのと同時に、双子が有り得ないことを言った。
パソコンに釘付けになったまま動かなくなったの後ろから、何時の間にやってきたのか埴之塚とハルヒが画面を覗いた。
「!!!?」
「ひゃー。ハルちゃん、かっこいいー!!」
「馬鹿者!!技術の無駄遣いだ、恥を知れ!!」
「まぁまぁ、環。抑えて抑えて。」
「だがな!」
「俺がやってたことを双子に明け渡したのが悪かったんだろうし。俺の責任だよ。」
「…それは違うぞ」
「え?」
「HP管理を任せたのは俺だからな。だからお前は悪くない。な?」
「…うん。サンキュ」
衝撃からようやく立ち直ったは、怒りMAXの環の肩に手を乗せて宥めた。
と、逆に諭されてしまい、キョトンとした顔になる。
が直ぐに苦笑すると、感謝の言葉を口にした。
と環がそんなことをしている間に、双子の標的はハルヒに変わっていた。
「ハルヒ、お前んち行って良い?」
「ダメ。どーせバカにするから」
「んじゃ、お前の女疑惑タレ流していい?ヒマだから」
「あのね;人を一体何だと…」
「「決まってんじゃん。【おもちゃ】」」
クスっと人の悪そうな顔で笑って、揃えて言った。
それを見たその場にいた人達は、怯える者・ため息をつく者・無関心を決め込んで作業している者に分かれた。
は其の中で、ため息をついて頭を抱えていた。
(…出たよ。双子の悪い癖が…この快楽主義人間どもが)
どうするべきか…とは考え込んだ。
というか、【おもちゃ】という単語を出したらきっとあの人が出て……
「おもちゃが好きなら是非我が部へーv」
「「!?」」
「あ、梅人先輩。」
そこへギィ…と不審な音がして部室のドアが開き、怪しい格好をした人物が変な人形と一緒に顔をだした。
は先ほど思い描いていた相手だと確認すると、名前を呼んだ。
の声に気付き、自分の部の説明を止めた猫澤は、に視線を移した。
「やぁ、くん。どうだいー?我が部に入ること考えてくれましたかー?」
「…先輩。その件に関してはきちんとお断りしたはずですけど?」
「そうでしたっけー?でも是非とも黒魔術部に欲しい人材なんですよー、君は。」
「あはは。それは有難う御座います。が、入るつもりはありませんので」
薄気味悪い笑顔で言って来た猫澤に、は満面の笑みで返した。
それに俺はこの部が気にいっているんで、と付け加える。
その言葉を受けて残念そうな顔をした猫澤の目の前に、双子が歩いて行った。
その手には懐中電灯が握られている。
……懐中電灯?
は階中電灯を見た瞬間、サっと青ざめ、双子を慌てて制した。
「あっ…!二人とも止め…っ!」
「呪い人形って何?」
「このくらいの光は?ダメ?」
「ぎゃーーーーー!!人殺しぃー!!」
「わーー!!光!!馨!!!」
質問しながら、いきなり猫澤に光を浴びせた双子を慌てて環と協力して抑え込む。
光を当てられた張本人は、悲鳴を上げてその場に倒れた。
は倒れ込んだ猫澤に駆け寄ると、ちゃんと生きているかを確認した。
当然生きているに決まっているのだが、何せ心臓に悪いことをしてしまったのだ。
部員の不始末について、謝罪をいれなければならない。
猫澤が目を覚ますまで待っていると、環が双子に自分の経験談を話しているらしく、後ろが騒がしくなった。
暫く経ってようやく目を覚ました猫澤には謝った。
そんなに猫澤は笑うと、これ以上巻き込まれないうちに…と部屋から出て行った。
猫澤の後姿を見送った後、振り向いたの目に映ったのは、説教をしている環とされている双子の姿だった。
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「…ねぇ?光くんと馨くん、お身体の具合でも悪いの…?」
「ああ、そういうわけではないんだよ。ただちょっと色々あってね。」
ムスっとした顔をして、ソファに座っている双子はとにかく目立った。
接待をしているたちは、全ての姫から二人の様子について聞かれた。
しかし説明できるはずもなく、はただ笑って誤魔化すしかなかった。
それは効果抜群で、女子生徒たちはの営業スマイルに魅了され、それ以上問い詰められることはなかった。
が、一緒に接客している人物は違った。
「ねぇ、ハルヒくん。光くんと馨くんを見分けるのに、もっと分かり易いポイントはないかしら?」
「そうですね…強いていえば…」
「ハルヒ?」
一緒に接客をしていたハルヒが女子生徒の質問に答えようとして、は嫌な予感がした。
そして、その予感が的中するということを、其の時はまだ誰も知らなかった。
**途中コメント**
ようやく5話目です。
主人公は猫澤先輩と会ってから、ずっと黒魔術部に
誘われ続けています。(裏設定)
この話は短く終わらせることが出来ればいいな…と。
06,7,23