「……なぁ。あいつはさっきから何やってるんだ?」
「「さぁー?」」
「でも楽しそうだねぇ、たまちゃん」
「そうかな…僕には寧ろ憐れに見えるけど…突っ込むのもイヤ。」
「…光。それには俺も同感だ。」

 

 

 

光と一緒に遠い目をして、は環を見た。

 

先ほどから一人椅子に座り、笑ったり唸ったり…と百面相をしている環。

周りから見れば十分怪しいその光景に、お客様が居なくて良かった…とは心から思うのであった。

 

光との声が聞こえたのか、一人百面相をしていた環が人差し指をピっと立ててきた。

 

 

 

「ふはは!ひがむな光!!全ては計算通り!!」
「……ウソばっかり…」
「春といえば無論ラブコメ!」
「…聞いてないし」

 

 

 

勢い込んで言ってきた環に、がボソっと突っ込むが効果は無かった。

更に高笑いして続ける環を見て、ハァ…とため息をつく。

 

 

 

「そもそも俺とハルヒはラブコメ要員!悩まずとも結果は見えていたのだ!!」
「「殿ー、僕等は?」」
「ホモホモ要員だ!」
「ホ…っ!?」

 

 

 

「この線から入ってこないように」と言いながら、ガリガリと大理石に傷をつけながら線をつけていく。

ホモホモ要員と呼ばれた中には、ももちろん入っていた。

 

これ以上関わらないようにしようと思い、環から視線を外したは双子を見て嫌な予感を感じた。

 

 

 

「ふーん…てゆーかさぁ、殿」
「分かってんの?」
「?」

 

 

 

なんかムカツク…と呟き、不機嫌そうな顔をした双子が口を開いた。

 

 

 

「「「「ハルヒ(ハルちゃん)が女ってバレたら、ホスト部にはいられなくなるんだよ?」」」」

 

 

 

双子とと埴之塚は環を見て、声を揃えて言った。

瞬間、環は魂が抜けたように動かなくなった。

 

 

 

「それに女の子のかっこしたら、きっともっとかわいーよねーv」
「考えてみりゃ中学ん時も男にモテモテだったんじゃん?」
「調書によればほぼ月に一度は告白されているな。」
「まぁ、それは全てハルヒが持ち前の鈍さでクリアしているけどな。」
「あー。こりゃ殿なんか近づけなくなっちゃうねー」
「う゛……」
「「まぁ、いいけど?僕らは同じクラスだから?」」
「――!!?」

 

 

 

トドメとでも言うように双子が言った瞬間、環に電撃が走った。

面白そうだから、と双子と一緒になってからかっていたは、流石に環の事を心配した。

 

大丈夫か?と聞こうとして伸ばした腕を、瞬時に引っ込める。

何故かというと、暫くの間固まっていた環が急に動き始めたからである。

動き出したかと思えば、何処からかホワイトボードを取り出して来てマジックで何やら書き始めた。

書き終えると全員をその前に呼び集めて、説明を開始し始めた。

はその説明を聞きながら、無謀なんじゃ…と苦笑した。

 

 

 

「すいません、遅れ……」
「あ、ハルヒ。」
「それでは明日の『ハルちゃんは断じて男の子』作戦はフォーメーションAに決定!!」
「「イエッサ−!!」」
「…何の会議?」

 

 

 

説明が終了した途端に音楽室のドアが開き、ハルヒが顔を出した。

やってきた途端に、変な会議をしている環たちを遠い目で見つめる。

そんなハルヒに何時の間にかその輪から抜けていたは、声を掛けた。

 

傍に立ったに気付いたハルヒは、怪訝そうな顔をしてを見上げた。

 

 

 

「何の話し合いですか、あれは。」
「ん?あれは、お前が明日身体検査で……」
「案ずるなハルヒ!!お前の秘密は俺達が守る!!だから俺達だけのお姫様で居てください!!」
「…別に秘密にした覚えはありませんが…」

 

 

 

が説明しようとした所で、環がハルヒの肩を掴んで割り込んで来た。

衝撃でつま弾きされたは、眉間に皺を寄せた。

 

 

(全く…ハルヒの事となると周りが見えなくなるんだからな、環は。)

 

 

顔を顰めたまま、はため息をついた。

 

 

************************

 

 

 

『只今より1年生の身体検査を実施させて頂きます。恐れ入りますが一年生の皆様は各校舎の保健室へ御足元にお気をつけてお越し下さいませ』
(……変なアナウンス。バカみたい…)

 

 

 

次の日

いよいよ身体検査が始まり、アナウンスが校舎内に響き渡った。

ゾロゾロと教室から出て保健室へ向かう一年生の中には、もちろん双子とハルヒの姿があった。

先ほどのアナウンスを聞いて、ハルヒはうんざりした顔をした。

 

保健室に行くだけなのに、今のアナウンスはおかしいだろう……

 

ため息をつきたくなる思いをぐっと押さえて、ハルヒは一緒に並んで歩いている双子に話し掛けた。

 

 

 

「やだなぁ…フォーメーションAって何だろ…大体桜蘭の身体検査ってどんな…また大げさなんじゃ…」
「いんや。設備自体は庶民校とあんまり変わらないらしーよ。」
「そーそー。こーゆーのに貧富の差ってあっちゃマズいんじゃない?一応医療モノだし」
「そっか。それなら…」
「「「「ようこそいらっしゃいましv」」」」

 

 

 

双子の言葉に安心したのも束の間

扉を開けた先にあった光景に、ハルヒは気が遠くなるような目眩がした。

 

入った瞬間に医師や看護士たちに至れり尽せり接待をされ、ハルヒはどうしていいか分からず、されるがままになっていた。

 

順番を待っている間、先に背丈を計った双子を見つめた。

身長を読み上げ、ギネスものなどと言う医師に歓喜の声をあげる女子生徒たちを見た瞬間、遠い目をした。

そこへ、自分の名前を呼ぶ声がして、ハルヒはそちらに顔を向けた。

 

瞬間、ハルヒは目を疑った。

 

振り向いた先に居たのは、白衣を着たここに居る筈がない銛之塚と埴之塚だった。

 

 

 

「二人は何かあった時の対処要員だよ。」
「まぁ、何かあっても困るけどな。」
「鏡夜先輩。それに先輩も…2・3年は授業では;」
「俺とは保健委員だからな。」
「ハニー先輩たちは多分何も考えていないだろうけど。」
「ハァ…それにしてもこの接待ぶりは一体…」

 

 

 

固まってしまったハルヒの元に、と鳳が近づいた。

再び居る筈のない真面目そうな二人の登場に、ハルヒは目を丸くした。

鳳の説明を聞いて納得したハルヒだが、周りで繰り広げられる褒め言葉付きの身体検査の様子に疲れた顔をした。

 

そんなハルヒに鳳が再び説明をし始める。

そこへ順番待ちになったのか、双子もやってきてペラペラと話始めた。

 

 

 

「…そういえば環先輩は…?」
「ん?環なら……」

 

 

 

キョロキョロと不思議そうな顔をして辺りを見まわすハルヒに、が言おうとした時

ドン、と誰かとぶつかってしまった。

 

 

 

「あ…も…申し訳ない…」
「いえ、お気になさらずに…」
「大丈夫ですか?先輩」
「あ…あぁ」
「何、あの医者。ヤブっぽーい」
「まー、こんだけ医者集まりゃ1人ぐらいはねー」
「いや、あれは……」

 

 

 

先ほどぶつかってきた人を見ながら皮肉を言う双子に対し、は視線を外すことなく呟いた。

それを見ていた鳳も、顎に手を当てて先ほどの医師を見つめて目を丸くしていた。

 

そんな二人のいつもと違う態度を見て、1年生ズは顔を見合わせた。

 

 

第ニ十三話  第ニ十五話

 

**途中コメント**
微妙なところで次回へ行きます。(ぇ)
なんか長くなってきたので、途中で打ち切り。
続きは早い内にアップいたします。

06,7,16