「いらっしゃいませv」

 

 

 

が復活して1週間がたった頃

満開の桜の下で、本日のホスト部は始まった―

 

 

 

「お姫様、どのカップにお茶を?フォリー?ウースタ−?それとも、スージーのガーディニアで?」
「まあ素敵v英国アンティークね。環様のお好みは?」
「こちらの姫をテイクアウトで」
「やだ…環様ったら」
「行った事ない?英国のコヴェント・ガーデン」
「うーん…アンティークマーケットはポートベローしか…」
「結構面白いよ?この辺のヴィクトリアン物も大体そこで…」
「つ…っ!「馨!?」
「まったく…よそ見してるからだ。おまえは僕だけ見てればいいんだよ。」
「光……」
「さ!早く保健室へ!!」
「もう光の愛の薬で治っちゃったよ…!!」
「はあ…もう駄目…」
「もったいなくてよ!しっかり見なきゃ!」
「おっしゃる通りです、お客様」
「「え…?」」
「この桜の様に美とは儚いものですからね。
 1日として同じ姿は見られない…そんな日々移りゆく美を収めた写真集など作ってみましたが……」
「「買ったァ!!」」
「…ああやって成り立ってたんだなうちの部って…」
「てゆーかいつ撮られたの?僕等」
「お前等、それ今更の発言だぞ?」
「「先輩」」

 

 

 

遠巻きに、ホスト部面々のことを見ていたは腕を組みため息をつきながら双子に近づいた。

ポカン…と間抜けな顔で見てくる双子に、苦笑を漏らす。

 

 

 

「それよりも、馨。指、ちゃんと冷してこい。」
「えー?」
「えーじゃない。後で腫れてもしらないぞ?ほら、光に連れてってもらいな。環には俺から言っとくから」
「「はーーい」」

 

 

 

馨の手を取り、火傷の場所を触りながらは言った。

それに痛そうに顔を顰めながらも、行こうとしない馨。

しょうがないなぁ…とは再び笑うと、指から手を離し今度は光の手を取る。

そして、二人を並べると同時に背を押した。

 

渋々…といった感じで双子は会場から出て行った。

その後姿を、は腰に手を当てて見送った。

 

 

 

「環」
「お、。どうだ、楽しんでるか!」
「まあね。というか、環その格好似合ってる」
「そ…そうか?そういう、お前も似合ってるぞ」
「あはは、有難う。」

 

 

 

環や双子や鳳の着ているウエイターのような衣装と同じモノを身に纏っている

ハルヒや埴之塚、銛之塚が着ている武士のような格好でも良かったが、どちらかというと今着てる方が似合うと考えた結果である。

 

 

 

「あ、そうそう。光と馨、今ちょっと抜けてるから」
「何?」
「二人が悪いんじゃないよ。俺が抜けていいって言ったんだから」

 

 

 

あからさまに不機嫌な顔をした環に、慌てて弁解する。

そして、先ほどあった事の経緯を説明した。

 

 

 

「…というわけで、馨、火傷しちゃったから光を付き添いで行かせたんだ。」
「そうか。分かった。…にしても、この部の奴らは火傷が多いな」
「あはは。そういえばそうだね。」
「笑っているが、1番始めに火傷したのはお前だぞ」
「え゛っ?そうなの?」
「あぁ」
「えぇー…じゃあ気をつけないと。てか、俺が1番ドジだったりする?」
「うーむ…それはハルヒの方が上ではないか?」
「そうかな?まあ、ハルヒがドジっても可愛いで終わりそうだけど。」

 

 

 

変な方向へと討論をし始めていることに気付き、はハタと会話を止めた。

環もそれに気付いたのか、顔を赤らめながら咳払いをした。

暫くの間、二人の間には沈黙が続いた。

どうやって話を切り出そうと、互いに考えていると声がかかった。

 

 

 

「環、呼ばれてるみたいだよ。」
「そういうお前も、指名待ちみたいだぞ」
「……」
「……」
「…ク…ッ」
「クス…」
「「しょーがない。行きますか」」

 

 

 

視線を合わせて暫く黙った。

どちらと問わず吹き出し、顔を合わせて笑い合ってから声を揃えて言った。

 

 

 

*****************

 

 

 

「「先輩ー」」
「お、光に馨。お帰り。どうだった?」
「あんなのすぐに治ってたよー」
「ていうか、別に冷さなくても平気だったしねー」
「あのな…」

 

 

 

戻って来た双子に声を掛けられ、接客をしていたは顔を上げた。

顔を合わせた途端に、ペラペラと話だした双子に呆れ顔を作る。

 

暫く会話していると、双子は鳳に呼ばれていってしまった。

も接客していたことを思い出し、椅子に座っていた女子生徒に謝った。

 

 

 

「ごめんね、姫たち。」
「いえ、いいんですよ。それより、光くんと馨くんはどうなさったんですか?」
「あぁ。さっきちょっと馨が不注意で火傷しちゃってね。」
「まぁ。大丈夫なんですの?」
「うん。本人たちも大した事なかったって言ってたし…心配かけちゃってごめんね。」

 

 

 

ニッコリと、いつものように微笑んで言ったに、顔を赤くして女子生徒たちは慌てて手を振った。

その様子を見て、は更に微笑んだ。

 

 

(可愛いなぁ…)

 

 

慌てふためく女子生徒たちを可愛く思うのはいつものこと

は紅茶のおかわりを注ぎながら、そう思った。

 

と、突然辺りが騒がしくなった。

何事かと、騒がしくなった方向を見ると、そこにはいつも通りな光景が広がっていた。

 

ハルヒを両側から双子が挟み込み、何やら楽しそうに会話をしている。

双子が傍にいた環を見た瞬間、環の額に青筋が走った。

そして、その傍で何やら資料に目を通していた鳳に話しかけた環に、鳳が何やら見せた途端、環が叫び出した。

 

不埒者ー!とか殿がご乱心じゃー!とか色々聞こえてくる。

 

 

(…何やってるんだよ)

 

 

ため息をついたは立ち上がると、女子生徒たちに断りを入れて環たちの方に近づいた。

 

 

 

「環。」
!!こいつ等最悪なんだ!!」
「…いきなり何?大体分かるけど…(見てたから)」
「「僕等はただ、ハルヒと選択教科決めてただけじゃん。なー?」」
「あ、うん。」
「そ。じゃあ、環が悪いんじゃん。」
「なっ!?はハルヒたちの味方だっていうのか!?」
「や、この場合環が悪いから…」

 

 

 

味方も何もないんじゃ…と続けようとして止めた。

ピョンっと突然姿を現した埴之塚が、ハルヒに抱きついたのを見たからだ。

 

 

 

「ハールちゃん!ハルちゃんのクラスは身体検査いつー?」
「え…?」
「あぁ…もうそんな時期……」

 

 

 

埴之塚の言葉にが頷こうとした瞬間、その場の空気が凍りついた。

以外のメンツが一斉にハルヒを見た。

それに気付いたも、話すのをやめてハルヒを見た。

 

全員に見つめられたハルヒは、考える振りをして、言った。

 

 

 

「……バレますね。さすがに…」
「「「「―――!!」」」」
(そうだった…)

 

 

 

身体検査=裸体になるということ=ハルヒが女だとバレる=ハルヒがホスト部に居られなくなる

 

一つの方程式が全員の脳裏を過った途端、衝撃が走った。

はしかめっ面を作ると、そういえばそうだったな…と頭をかいた。

 

こうして、新学期早々ホスト部に大問題が勃発した。

 

 

第ニ十二話  第ニ十四話

 

**途中コメント**
ようやく騒動勃発しました。
というかハルヒは本当、物怖じしない子ですね。(苦笑)
久々に書いたら主人公のキャラが少し変わってしまってるし…;
あと1話くらいでこの話終わらせられたらいいなぁ…と。

06,7,9