「ちゃーん♪もう身体は大丈夫なの〜?」
「もう平気だよ。ハニー先輩。心配してくれて有難う。」
鉄格子にぶつかり、環に抱えられて保健室に行ってから数日後
はようやく、いつも通りの部活に出てきていた。
あの後、鳳がの家へ連絡を入れの専属医師を学校へ呼び出した。
そしてすぐに治療を受けさせられ、強制的に帰宅させられた。
(だいたい、もう平気だったんだ。)
危険なことに首を突っ込むのはいつものことなのに。
紅茶の入った食器を運びながら、は顰め面をした。
強制的に帰宅させられたことはまだ納得できる。
が、心配した執事やメイドたちや過保護すぎる両親のお蔭で、は数日間家から出させて貰えなかった。
環たちが訪れても、過保護な両親はの部屋に通さなかった。
お蔭で、部活の事等は携帯で連絡をとって教えて貰うことになってしまった。
怪我はとっくに治っていたので、は両親を説得してようやく学校に出て来たのであった。
「〜…」
「ぅわっ!?た、環…?」
はぁ…とため息をつきながらテーブルに食器を置いたところで、いきなり後ろから抱きつかれた。
と同時に弱弱しいが聞き覚えのある声で名前を呼ばれる。
は驚きに目を見開き、降り返りながらのしかかってきた相手の名前を呼んだ。
振り向いた先にいたのは、やはり思い描いた通りの人物で
ここのナンバー1という自覚があるのかないのか、と突っ込みたくなるくらい情けない顔をして
いつものホストスタイルの環からは想像できないくらいの姿勢で
ペタリとにくっ付いていた。
「ようやく出て来たかー…うう…会えなくて寂しかったんだぞー」
「ご、ごめんって。ていうか俺のせいじゃないんだけれども…」
「まあお前のせいじゃないにしろ、お前が部活に来ていない間、環が使い物にならなかったことは事実だからな。
あぁ…かといって、お前にその間ダウンした分の金利を求めたりはしていないからな。」
「……鏡夜。さり気無く言ってることが黒いよ?」
苦笑しながら、会話に突然入って来て黒い台詞を言った人物を見た。
その人物―鳳は腕を組んで、それはそれは実に愉快そうに微笑んでいた。
「それと休んでる間のお前の指名分も払わなくていいからな?」と更に言われ、渇いた笑いを零した。
とりあえず、背中に引っ付いている環を退かすと、は思いきり伸びをした。
「―そういえば、鏡夜。」
「何だ?」
「そろそろ身体検査だよな?時期的に…」
「あぁ、そうだな。」
気分を切り替えて、ふとは言った。
制服のポケットに押し込んだままだった1枚の紙を取り出す。
「これも、やらないといけないしな。」
「そうだな。その為に各自早めに衣装をそろえないとな」
「あぁ。…鏡夜はどっちにするんだ?」
「それは当日のお楽しみにきまっているだろう?」
「…そうでしたね」
ペシっと手にした紙を弾くと、鳳の顔を見た。
ニッコリ微笑まれ、一瞬のうちに視線を顔ごと逸らす。
この顔の時の鳳を直視できるほど、まだ生気は戻っていないのだ。
は渇いた笑いを再び漏らすと、手にしている紙をじっと見つめた。
そこに書かれているのは、今度のホスト部の接待の演出方法についてメモったものだ。
(俺は…どっちにしよう…)
そこに書かれている2つの服装のうち、どちらにするかは未だに悩んでいた。
(…まあ、どっちでもいいか)
そう思うと気を取り直して、畳んだ紙を再びポケットに仕舞い込んだ。
「…あ、先輩…」
「ん?…あ、ハルヒ!久しぶりー」
「…お久しぶりです」
声を掛けられて、は不思議そうな顔をして声のした方を振り向いた。
振り向いた先に、食器を手に意外そうな顔をしたハルヒがいた。
は笑みを浮かべると、ハルヒに近づいた。
「この前は悪かったな。平気だったか?」
「あ…いえ…自分は大丈夫でしたけど…」
「そう。それなら良かった。」
戸惑いの表情を浮かべたハルヒに優しく微笑んで言った。
「ところで…」とは話題を切り替えた。
「ハルヒはどっちにする?」
「え…?」
「今度の春の接待の衣装だよ」
「あ…自分は…」
「衣装のことなら心配するなよ。俺が貸し出してもいいし。」
「オーダーがいいなら双子にいいなよ。」と続けた。
「分かってるとは思うけど…避けることは無理だからな?」
「……ですよね」
基本、そういうのが苦手なハルヒは諦めた顔をした。
最初よりは大分抵抗しなくなってきたが、やはり落ち着かないのだろう。
とりあえず、身体のラインがそこまでハッキリしてない方がいいか…とは思った。
**途中コメント**
すっごく微妙なところで次回になります…(をぃ)
次は原作通りに進みます。…多分(苦笑)
06,7,9