「「いいなずけぇ?(しかもあの)鏡夜先輩の!?」」
「はいv」
「えと…宝積寺れんげさん…でしたっけ…?」
「はいv明日付けで1−Aに転入する事になりましたv」
「ちなみに育ちは10歳からフランスですv」と満面の笑みで答えるのは、突然訪問してきて鳳に抱きついた女子生徒。
ソファに座っている彼女の目の前にはが、同様にソファに座っていた。
の後方には、どんよりと重たい空気を背負い隅の方で蹲っている環と、その環を見て何やら言い合いをしている部員たちがいた。
は額に手を当てると、溜息をついた。
「環ぃー。いい加減機嫌直せよー」
「……」
「また無言…」
「「ほらぁ。お母さんがお父さんに隠し事してたからだよ、やっぱり」」
「…どうでもいいが、その夫婦設定は定着させていくつもりか?」
背もたれの上部に腕を乗せ、首だけを後ろにやっては言った。
が、こちらに背を向けた状態で体操座りをしている環は何も言わなかった。
呆れたように言ったの側に立っていた双子が、環の背中を見ながら鳳に言った。
それに、何の感情も込めていないような音色で鳳が答える。
はもう一度溜息をついて、ソファから立ちあがった。
鳳の肩に手をおき、「後は任せた」と言って、鳳が頷いたのを確認してから環の側に寄った。
「たーまーき」
「……」
「…また黙りか?そういえば、前もあったなぁ。あの時はなんとか料理で釣ったけど…今回はそうもいかないか。」
「……」
「あのさ、環。鏡夜だって驚いているわけだし。それにほら、まだ真実って決まったわけじゃないだろ。」
ずっと黙り続ける環に向かって、は続けた。
言葉を切ってチラ、と後ろを見ると、鳳たちが暴走する宝積寺に圧倒されているところだった。
それを見て背筋を冷汗が流れるのを感じたは、環に視線を戻した。
その場にしゃがんで、何も答えず丸まったままの背中に手を置く。
「…早く復活しないとハルヒも危ないよ?」
「…!」
「あの姫さんは、少し暴走しすぎるところがあるみたいだ。」
「…?」
「ほら。環は部長なんだろ。そんなんでどうするんだ。」
最近の環への切り札であると思われる人物の名前をが口にした途端、環が物凄い勢いで振り向いた。
やっと向いてくれた…とは安堵の笑顔を浮かべた。
先に立ちあがったは、後からノロノロと立ちあがった環の背を力いっぱい叩いた。
「…っ!」と言葉にならない悲鳴をあげ、よろめいた環を見て、可笑しそうに笑った。
半分涙目で睨まれて、謝りながらもの顔は笑っていた。
「…」
「あはは。ごめんってば環。」
「本当に悪いと思ってるのか!?お前は!」
「思ってる、思ってるから!」
復活した環はの肩に腕を回し捕らえた。
怒鳴りつける環の声は、未だに笑いつづけているには効果は無かったみたいで。
そんな相手に怒鳴っているのもバカらしくなり、次第に環の顔にも笑顔が浮かんだ。
そんな時だった。
二人の耳に、ようやく宝積寺とハルヒの声が届いたのは。
「……人違いでは?」
「「待てハルヒ!!少しは鏡夜先輩に気をつかえ!!」」
「いいえっ!この目に狂いはありませんわ!」
勢いのあまりソファから立ちあがった宝積寺が、憤るように言った。
その声に、じゃれ合っていたと環は、ようやく宝積寺たちのほうをみた。
勢いづいた宝積寺は更に続けた。
「誰にでも優しくそれでいて決して見返りなど求めたりしない!!
孤独を愛し、だけど本当は寂しがりや!!そんな、今をときめく恋愛シュミレーションゲーム…」
「うわぁ!!やめろぉ!」
「誰なんだ!それはぁ!!」
本気の目をした宝積寺の口から飛び出す言葉の数々に、双子を始めとする全員が叫んだ。
中には混乱しすぎて訳がわかんなくなりだす者も出現した。
が、次に飛び出した単語にそれはピタ…と止んだ。
「『うきvドキ☆メモリアル』の一条雅くん!!…に、そっくりなあなた!!!」
ビシっと、鳳を指差して宝積寺は言った。
瞬間、その場の全ての空気が凍りついた。
我に返ると同時に、全員の心の中に同じ単語が浮かんだ。そして全員がそれに衝撃を受けた。
が、ハルヒだけは何の事だかさっぱり分からない、と言った様子でその場にいた。
「…成程、キャラ萌え系か。萌えキャラに俺を当てはめ婚約者という妄想にまで及んだと…」
「妄想って……お前のいいなずけじゃ…」
「その事については、一度たりとも肯定した覚えは無いが?」
(なら早く言えっての…)
「な、環。俺の言ったとおりだっただろ?」
「あぁ…そうだな。」
爽やかな笑顔で答えた鳳に、1年’sは揃って心の中で毒づいた。
しかし、宝積寺の勢いは衰えずに、一人ウキウキと埴之塚と話を続けていた。
そして……
「決めましたわ!花嫁修行も兼ねて私…ホスト部のマネージャーになります!!」
「あーー……鏡夜…」
「彼女は鳳家の大切な取引先の御令嬢だ。くれぐれも失礼の無い様頼む。」
「……だそうだ。」
キラキラと輝く目をして言った宝積寺を見て、環は部長らしく傍らの鳳に申し出ようとした。
が、先手を取られ、不敵に笑った環は双子と共にハルヒの側に行き、肩を叩いた。
「これもホスト修行だ!!おとーさんは心を鬼にするぞ!!」
「ちょっ…!」
泣きながら去る環と双子に賛同したかのように、埴之塚・銛之塚もその場を去って行った。
後に残されたハルヒは鳳の意見しようとしたが、「ミスすれば借金倍増だ」と釘を差され、何も言えなくなってしまった。
「あ゛ー…ハルヒ。ごめんな?」
「…先輩が謝る事じゃないです。」
「それもそうなんだけど……う゛ーん…鏡夜も容赦無いなぁ…」
全員が去ったのにも関わらず、残っていたはハルヒに声をかけた。
どんよりとした空気を背負い、その場に立ち尽くしているハルヒは力なく言った。
それに同情したは、片手をズボンのポケットに入れ、空いている方の手を頭の後ろにやりながら言った。
「ま…まぁなんだ。俺も手伝うし…頑張ろうぜ。な?」
「……はい。」
未だにどんよりとしているハルヒの背中を、は軽く叩いた。
驚いて顔を向けてきたハルヒに、笑みを向ける。
「大丈夫だって、ハルヒ。花嫁修行っても、多分お菓子作りやらなんやら…お前の得意分野ばかりだと思うからな。」
「…先輩」
「うん?」
「それはフォローのつもりですか?」
「……ちょいとばかり苦しかったかな?やっぱり…」
ハルヒの鋭いツッコミに、う゛…と言葉を詰まらせたは、苦笑混じりで言った。
の反応の仕方に、今まで暗い顔をしていたハルヒの顔に笑みが浮かんだ。
それを見たは、苦笑混じりの笑みから安心したような笑みに変えた。
**途中コメント**
…最近文章が苦しくなってきました;
読みづらそうだなぁ…と思いつつ;(駄目だろ)
表情の表現ってしづらいですね…でも頑張ります。
あと2話くらいで終わらせられたらな…と。
06,4,3