「いらっしゃいませv今年もよろしく。」

 

 

 

クリスマスも無事に終わり、通常通り動いていたホスト部は、新年を迎えた。

新年早々にも関わらず第三音楽室には、いつも通り女の子たちの黄色い悲鳴が響いていた。

 

新年ということで、本日はホスト部員全員が着物を着用していた。

デザイン元は常陸院兄弟の母である。

 

……しかし無料というわけではなく。

後々は全員、レンタル料を支払わなくてはいけなくなるのだ。

…まあ、それくらいどうってことはないメンツなのだが。

 

全員揃っての出迎えも終え、それぞれに散らばって姫たちの接待を始める。

も同い年の姫と一緒に、ソファに座った。

 

 

 

「いらっしゃい、姫。今年もよろしくね。」
「も、もちろんですわ、様!今年も指名させていただきます。」
「有難う。ご指名、お待ちしております。」

 

 

 

ニッコリ微笑んだに、女子生徒は顔を真っ赤にさせながら俯いた。

その反応も毎回のことで、慣れだしたは可愛いなぁ…と思いながら、更に微笑んだ。

 

そこへ、埴之塚が泣きながらやってきた。

 

 

 

ちゃん、ちゃん。」
「どうしたの、ハニー先輩…って!?何泣いてるの?」
「ふえ〜……ぞうり片っぽなくなったぁ…」
「え?!さっきまではいてたよね?」
「……
「…え?モリ先輩?」

 

 

 

更に泣き出した埴之塚をなだめようとしていたに、声がかかった。

声のした方を見上げると、銛之塚が立っていた。

珍しく自分の名前を呼んだ銛之塚を意外そうに見上げる

その目の前で、銛之塚がしゃがみ込み埴之塚の草履がない方の足を持ち上げ、何かをはかせた。

 

 

 

「崇…」
「落ちてた。向こうに…」
「そうなんだ?良かった。」

 

 

 

はかせ終えて立ちあがった銛之塚に泣きつく埴之塚を見て、は安堵の溜息をついた。

 

 

(やっぱり先輩たちは凄いなぁ…)

 

 

目の前で埴之塚の機嫌取りをしている銛之塚を見て、は思った。しかし、声には出さない。

フ…と微笑んだ所で、はようやく周りが騒がしい事に気がついた。

 

うるさくなった場所を見ると、環がハルヒに箱に入った和菓子を手渡している所だった。

それに便乗したのか、泣き止んだ埴之塚が銛之塚を連れてその輪の中に入っていく。

いつのまにか、自分の接待相手だった女子生徒もそっちに行っていて、は苦笑しながらもその輪の中に入って行った。

 

 

 

「どうしたの?」
「あ、先輩…」
!この和菓子を仕入れたのは確かお前だったな?」
「うん、そうだけど。それが何か?」
「では、この和菓子をあと20個ほど注文してはくれないか?!」
「いいけど……誰がそんなに食べるんだ?」
「食べるのではなく、ハルヒにあげるのだ!!」
「結構です」

 

 

 

意気揚揚に答えた環に、遠い目をしたハルヒが言った。

途端に、意気消沈し、隅の方にいってしまう。

 

それに同情する者は居らず、自業自得という顔を全員がした。

 

 

 

「ハルヒ。それ、半分持ってあげようか?」
「…お願いします。」

 

 

 

腕の中に入りきれないほど、沢山の和菓子を抱えたハルヒに声をかける。

ひとつも落とさないようにと、バランスを取っているハルヒは助かったと言わんばかりに言った。

隠れていたハルヒの顔が、和菓子を取り除く度に見えてくる。

ようやくハルヒの顔が見えるくらいまでに和菓子を自分のほうに持ってくると、はその場を一旦離れた。

 

 

 

「これ、使うといいよ。」
「有難う御座います。用意がいいんですね。」
「まぁな。ほら、色々と使い勝手いいし。」

 

 

 

暫くして戻って来たの手には、紙袋が持たれていた。

がぶら下げている方には、既に先ほど預かった方の和菓子が入っている。

それをテーブルの上に置くと、ハルヒの持っている方の和菓子を見た。

ポケットからもう1枚持ってきていた紙袋を取り出して、畳んであるのを広げてハルヒに近づいた。

まだ沢山ある和菓子を一つずつ、崩れないように袋の中に入れていく。

 

 

 

「はい。」
「有難う御座います。助かりました。」
「お礼はいいから。困った時はお互い様ってやつだろ?」
「…そうですね。」

 

 

 

入れ終えた紙袋をハルヒに手渡す。

迷惑かけてすまなさそうな顔をしているハルヒに、は笑顔を向けた。

の笑った顔を見て、はにかみながらハルヒも笑う。

 

 

 

「……あれ?お客さん、新顔だね。」
「どしたの?入っといでよ」
「ねー」
「こおらっ!初めてのお客様にはもっとソフトに!!」

 

 

 

ふと、ドアの方を見た馨が疑問そうな声を出した。

馨の見ている方を、とハルヒも見た。

叱責した環は、表情を変え、ドアから覗いている相手に向かって手を差し出した。

 

 

 

「さ、怖がらないでお姫様。ようこそ桜蘭ホスト…ぶっ!?」
「いやぁ!触らないで!ニセモノぉ!!」
「ニセ…っ?」

 

 

 

近づいていった環が言い終わらないうちに、平手が飛んで来た。

見事にヒットした顔を押さえている環の頭の中は混乱していた。

環に平手を食らわせた相手は、続けて叫んだ。

 

 

 

「貴方がこの部の王子的存在だなんて信じられませんわ!!

王子キャラたるものそう易々と愛をふりまいたりしないもの!!

ちょっぴり憂いを含んだ、寂しげな笑顔が乙女のハートを震わすものなのに!!

どうしてそんなにバカみたいなの!?まるで頭の軽いナルシストじゃない!!無能!凡人!!!」

 

 

 

ガーっと嵐のように言いたてた相手を、キョトンとした顔でたちは見やった。

言われている張本人は、グサグサと突き刺さる言葉の数々にダメージ大で、返す言葉も見つからないようだ。

……事実、言葉を挟む隙もなかったが。

 

ようやく落ち着いた相手に環が何か言おうとした瞬間、再び相手が口を開いた。

 

 

 

「最っっっ低!!!」
「―――!?」

 

 

 

最後の一撃を食らわされた環は、一人スローモーションのようにその場に倒れ込んだ。

「「おおっ!新技だ!」」と双子が言うのも聞こえていないのか、そのまま環は起き上がらなかった。

心配して、が声を掛けようとした所で、鳳が思い出したように呟いた。

は不思議そうな顔をして、鳳を見上げた。

顎に手をやって考えるような格好をしていた鳳は相手を見据えていて、の視線には気付いていないようだった。

 

 

 

「君はもしや…」
「鏡夜様!!」
(鏡夜…様ぁ!?)

 

 

 

鳳に気付いた相手が、途端に涙を浮かべて鳳の名前を呼んだ。

それを聞いた他の部員は内心でツッコミを入れた。

驚いた顔をして一斉に鳳に視線をやる。

 

全員の視線が集まる中で、女子生徒は鳳に飛びつくように抱きついた。

 

 

 

「お会いしたかった…っ!私だけの王子様…っ」
「!」

 

 

 

抱きつかれた本人である鳳も、珍しく目を見開いている。

 

 

突然現れた女子生徒の登場でホスト部は騒がしい新年を迎えた。

 

 

第十六話  第十八話

 

**途中コメント**
ようやく原作の1冊目が終わりそうです…(汗)
このお姫様は個人的には好きですよ?
何か通じるモノが…(苦笑)

次はもっと弾けさせられたら…と思います。

06,3,18