「――そうそう。へぇハルヒ、良い筋してるじゃないか」
「そ、そうですか?」
「あぁ。これなら3日ぐらいでマスターできそうだな。」
「先輩のレッスンのおかげですよ。」
「いやいや。ハルヒの飲み込みの良さには、本当驚いたぜ。さすが、特待生で学年首席」
「……関係ないような気がしますが」
翌日
約束通り、ピアノの置いてある部屋ではハルヒのレッスンをやっていた。
思っていたよりも飲み込みの早いハルヒに、は素直に感心した。
の余計な一言に、ハルヒは嫌な顔をした。
「少し休憩しようか」とが提案すると、ハルヒも頷いた。
「お疲れ〜。紅茶はいかが〜?」
「有難う、光」
休憩に入ったと同時に、待ってました!というようにトレイを持って入って来た光に、はお礼を言いつつ笑った。
「あ…」と紅茶をとハルヒに渡しながら、光が思い出したように声を出した。
「先輩にお客来てるよー」
「俺に?」
「そー」
くい、と光がたった今入って来たドアを指差す。
疑問に思いながら、はカップを光に渡しハルヒに断りを入れてから、ドアから出た。
「……あ」
「今日は、くん」
「光の言ってたお客さんって、春日崎さんだったのか」
「なぁに?私じゃ不満かしら?」
「いえいえ?そんな事は言ってないよ?」
「本当かしら?」
「本当だってば。俺を信じてよ」
ドアから出るとそこには、春日崎が居た。
ニッコリとその顔に微笑みを浮かべて、意地悪なことをに向かって言ってくる。
それに苦笑しつつは対応した。
「で。春日崎さん、何か用?」
「用じゃなければ来ないと思うのだけれど…?」
「それもそうだね。で?」
「…結構せっかちなのね。くんって」
「そう?普通だと思うけど」
「でも、それが貴方の良い所なのかもしれないわね。」
「それはどうも。」
柔らかく微笑まれ、も微笑み返す。
暫くの間、他愛もない話に花を咲かす。
「あ、そうそう。ねぇ、くん」
「何?」
「パーティーで、私と踊ってくれるかしら?」
「……え?」
立ったままで話すのにも疲れ、揃って椅子に座ってお茶を飲んでいた時に、春日崎が突然言った。
はカップから口を離すと、春日崎を見た。
春日崎は両手でカップを包み込むように持って、真正面からを見据えていた。
一見、優雅そうに見えるその光景は、にとっては意外なモノでしかなかった。
いつもと少しだけ様子の違う春日崎に、は不思議に思った。
そして、直球に聞いた。
「……珠洲島くんと喧嘩でもした?」
「べっ…別に!?そういうわけじゃ…!やあね、何言って…っ」
「あ!危な……あつっ!」
「ごめんなさい!」
の言葉に明らかに動揺した春日崎は、慌てた拍子に紅茶を零しそうになった。
それに気付いたは、春日崎の手を取った。
途端に紅茶が零れ、零れた紅茶がの手に振りかかった。
煎れたての紅茶だったから、とても熱い…
は紅茶のかかった手を押さえ、「あつー…」と唸った。
そして、熱々の紅茶を煎れてしまった自分を呪った。
その前で、春日崎は慌てふためいて、の腕を取った。
「春日崎さん…?」
「ほ、保健室に…っ」
「大丈夫だって。これくらいの火傷…」
「大丈夫なわけないだろう?」
もう訳がわからなくなってしまっている春日崎に、苦笑しつつ言う。
そこへ、第三者の声が割り込んで来た。
声が聞こえたと同時に、春日崎が掴んでいる腕とは反対の方を掴まれる。
は驚いて、顔を上げた。
「鏡夜…」
「ほら。我侭言ってないで保健室にいくぞ。」
「ちょっ…」
「くん!」
顔を上げた先に居たのは、鳳だった。
いつもよりもより険しい表情をして、鳳は強引にを椅子から立たせると引っ張った。
鳳のらしくない行動に、はずっと目を見開いたままでいた。
止めようと声をかけようとしたが、振り向いた鳳の顔を見ては口を閉ざした。
そして、そのままずるずると保健室に連行される。
と、そこへ春日崎が心配そうな顔をして、の名前を呼んだ。
そんな春日崎に向かって、「大丈夫、心配しないで」とでも言うようには微笑んだ。
――それが、春日崎に伝わったかどうかは定かではないけれど。
「………鏡夜」
「何だ」
「……ごめんな」
「謝るくらいなら、最初から心配かけるようなことはしないでほしいな」
「……ごめん」
保健室に向かう途中の廊下で。
は相手の背中を見つめながら、謝罪の言葉を呟いた。
の言葉を聞いた鳳は、優しく言った。
その言葉に、は今度は謝罪の意味ではなく、了解の意味を込めて、謝った。
その顔に、笑みを刻んで。
**途中コメント**
少しだけ、原作と違うようにしてみました。
どんなものでしょうか……?
主人公は少し抜けた所があるといい。
そして。今回は登場キャラが少な過ぎましたね…(汗)
次は全員出る筈ですよ…?(曖昧)
06,3,8