「納得いかん…!!」
「あ、あのなぁ…庶民ラーメン食べながら言っても、全然説得力ないよ?環」
「何故次がなのだ…!しかもお前は喜んで引き受けるし!」
「しょうがないじゃないか。相手はお客様なんだし…」
「言い訳など聞かん!」
「…どうでもいいけどさー、殿も先輩も準備手伝ってよー」
「そうそう。パーティーまであと一週間なんだから」
ホスト部員全員での家でお泊まりをしてからから4日後。
クリスマスパーティーまで1週間となり、ホスト部は現在休部中であった。
全員がパーティーに向けての計画を立てている所に、環の怒りの含まれている声が響いたのだ。
その声に返事するように声を出しているのは、環の怒りの原因でもあるの物で。
そんな二人の会話を呆れ顔で聞いていた部員たちは顔を向けた。
そこには、ずるずると不機嫌面で庶民ラーメンを座って食べている環の側で、困り顔で立っているが居た。
双子の声は聞こえていないらしく、未だに言い合いは続いていた。
言い合いと言っても、一方的に環が捲くし立てているだけなのだが…
一通り言い終えて満足し、環がようやく大人しくなったのは言い合いを始めてから20分後のことだった。
ようやく環の相手から解放されたは、ゲッソリした表情で、双子たちの輪の中に入った。
「「お疲れー、先輩」」
「何で俺、あんな風に言われたんだろう…」
「しょうがないんじゃん?殿って、ハルヒと先輩のことになるとうるさいから」
「ハルヒは分かるけど……なんで俺も?」
「「さぁ?その辺は直接殿に聞いたらー?」」
「……どうでもいいけどさ。鏡夜、パーティーの計画、どこまで進んだ?」
「現段階では去年と大体同じだな。」
「そう。」
双子なりに元気づけてくれてるようで、は苦笑した。
気を取り直して、鳳に現段階でのパーティーについてのことを聞いた。
「今年も料理、楽しみにしているぞ。」
「え?今年も俺が作るの?」
「当たり前だろう?お前の料理は人気があるんだよ。」
「そうなんだ。じゃあ、今年も頑張ろうかな。」
毎回、ホスト部主催のパーティーとなると、絶対といっていい程、料理担当はに回ってくる。
鳳の不敵な笑みに、も笑みを作った。
「あ、そういえば……ハルヒ」
「はい?」
突然、思い出したかのように、はハルヒの名前を呼んだ。
急に名前を呼ばれ、驚いたような顔をしたハルヒがの元に行く。
側にやってきたハルヒに、迷わずは言った。
「お前、社交ダンスは踊れるのか?」
「……は?」
「は?って…ウチのクリスマスパーティーじゃ必須なんだぞ?」
「そんなの聞いてませんけど…!?」
「あー…てことは踊れないタイプか?」
「というよりも、社交ダンスすら踊ったことないです。」
「そう…か。んじゃ、俺が教えてやるよ。」
「え…?」
「良かったなーハルヒ。」
「先輩、教え方上手いぞー。」
「「それに優しいしなー」」
「……光、馨。おだてても何も出ないぞ?」
”社交ダンス”という単語に、困った顔をしたハルヒに、は溜息をついた。
ダンスのステップを教えてやると言ったの顔を、ハルヒが不思議そうに見上げた。
そこへ、今まで環の所に言っていた双子がやってきて、口々に言った。
それには額に手をあてて、嘆息した。
「…んじゃ、ハルヒ。明日から練習しようか。」
「あ、はい。宜しくお願いします。」
「あぁ。最初から言っとくけど、厳しくいくからな?覚悟しとけよ」
「それは、わかっています。」
「そうか。なら、良かった。」
両側からゴチャゴチャ言ってくる双子を無視して、はハルヒに向き直って言った。
真剣な表情で頷き、頭を下げてきたハルヒに、は微笑んだ。
と、いきなり微笑んでいたの後ろから、ぬっと手が伸びてきての首に巻きついた。
同時に聞き覚えのある情けない声が聞こえてくる。
「ー…」
「ぅおわっ!?た、環!?」
驚いて振り向こうとしたが、後ろから羽交い締めにされているため動かない。
仕方なく首を回して後ろをかろうじて見ると、どんよりと背中に暗いものを背負った環が目に入った。
いつも以上に暗い環に、は目を見開いた。
「……どうしたんだ?環…」
「ハルヒのダンスレッスンの相手を譲ってくれっ!!」
「はあ?」
不思議そうな声を出したを強制的に自分の方へ向かせ、決死の表情した環はそう叫んだ。
突然の環の発言に、は驚きの声をだした。
真っ直ぐに見据えられて、は二の句を告げるのに暫く時間がかかった。
「…いきなり何言ってるの?大体、環じゃ身長差的に無理でしょ?ハルヒの相手なんてさ」
「そ、それは…!」
「それに、環、教えれるのか?とても丁寧に男役の方のダンスを」
「ぐ…っ」
「どうせ環の事だから、ハルヒに女の方のダンスを教えようと思ってたんだろ?」
ジっと逆に見据えられ、次々に出てくるの言葉の数々に、環は口篭もった。
腕を組んだが環の思考をズバリと言い当てると、それきり環は押し黙った。
(図星か…やっぱり分かり易いな…)
ググ…と押し黙ってしまった環を見やり、は溜息をついた。
「とにかく。ハルヒのレッスンは俺がやるから。いいね?」
「……分かった」
シブシブ頷くが、まだ納得がいっていないらしい。
恨めしそうに見てくる環に、は再び溜息をつくと、一旦その場を離れた。
鞄を引っ掴んで再び環の元に戻ってくると、鞄を開け中を探った。
そして、取り出した物を不思議そうな顔をしている環に手渡す。
「はい、環。」
「? 何だ、これは?」
「今日、ちょっと試作で作ってみたんだけど、生憎1個しかなくてさ。環にやるよ。」
「いいのか?」
「あぁ。元々はハニー先輩に食べてもらおうと思ったんだけどさ。」
手の上に乗せられた、片手程の大きさのビニールに包まれた苺の乗ったお菓子を見て、環は言った。
「美味しいかどうかは分からないけどな」と苦笑しながらは言った。
ビニールを丁寧に取った環は、そのお菓子を口に近づけた。
「……甘いな」
「そう?」
「あぁ。でも、不味くはない」
「良かった。じゃあ、それ、今度のパーティーの時のデザートとして出してもいいよな?」
「当たり前だろう?だが、もう少し砂糖を減らした方がいいかもな。俺の意見だけれど」
「…環にしては、正論だね」
「何…?」
「嘘、嘘。有難う、環」
素直な感想を漏らした環に、は笑った。
「んじゃ、皆に見つからないうちに食べてしまってな。」
「任せろ。」
環の手の中にあるお菓子を指差して、は言った。
それに返事をした環は、その場で物凄い勢いで食べ終わった。
少々下品と言える食べ方をした環に、は一瞬驚いた顔をして、すぐに苦笑した。
「そんなに急いで食べなくても…」
「(モグモグモグ…)…急いで食えって言ったのは、お前だろう」
「それはそうだけど…」
あんな食べ方するとは思わなかった…と、は笑いを堪えつつ思った。
笑い出したに、環はキョトンとした。
「…あー、可笑しかった。」
「何がだ?」
「別に、気にしないで。…あ、環」
「何だ?」
「口にソースついてる。」
一通り笑い終え、落ち着いたは環に向き直った。
環の口元に先ほどのお菓子のソースがついているのに気付き、はハンカチを取り出して拭いた。
「これでよし、と。」
「あ…ありがと…」
「いえいえ。どういたしまして」
綺麗に拭き取り終えて、お礼を言って来た環に笑った後、はハンカチを洗う為水道に向かった。
**途中コメント**
クリスマス編の続きです。
前回と一応話を繋げてみましたが…
あと1話か2話くらいでクリスマス編終えます。
06,3,5