「ごめんなー、ハルヒ。手伝わせちゃって」
「いえ。先輩一人で、大人数分作るの大変でしょう?自分でよければいつでも手伝いますよ。」
「……サンキュ」
部屋を出てからどれくらい時間が経ったのか
はハルヒと一緒に夕飯の仕度を始めていた。
コトコトと音を立てるステンレス製の鍋の中身を慎重に見ながら、は詫びた。
まな板の上で野菜を切っていたハルヒは手を止め、柔らかく笑いながら言う。
ハルヒの心遣いに感謝の言葉を口にした。
の言葉を聞いて、満足そうに微笑んだハルヒは再び作業に戻った。
「…それにしても」
「ん?」
「広いですね。奈月先輩んちのキッチン」
「あ?あぁ…キッチンというよりは厨房だからな。」
「そうなんですか?」
「あぁ。普段は専属の料理人たちが居て、俺たちの飯を作ってくれてるんだ。」
「へぇ…」
「だけど俺も料理するの好きだからさ。偶にこうやって、自分で作ったりしてる訳。環たちを呼んだ時はいつも俺だな。」
「そうなんですか。」
「あぁ。だけど、こんなに広いと動くのも面倒なんだよなー…」
冷蔵庫もあんな遠くにあるしさ…と苦笑気味に愚痴をこぼすを、ハルヒは意外に思った。
火を止めて、はコンロから離れ、冷蔵庫の前まで行った。
冷蔵庫の下の方を開け、中から何種類か果物を取りだした後、ハルヒの横に向かった。
「何作るんですか?」
「んー…まあ、簡単なデザートでも作ろうかと」
横からもう1枚まな板を取り出してきて、その上に持って来た果物を置いた。
包丁を取り出して、慣れた手つきで林檎を1つ手に取り、皮を剥いていく。
切り終わった野菜を、先ほどが見ていた鍋の中に入れたハルヒは、する事が無くなりの方を見た。
器用に皮を剥いていくの手つきに、見惚れる。
「……ハルヒ、終わった?じゃぁ、次はこれをミキサーに入れてくれるかな?」
「…あ、はいっ!」
ボーっと、自分の事を見ているハルヒに気付き、困ったような顔をしては言った。
の声で我に返ったハルヒは、差し出されている林檎を手に取った。
言われた通りにミキサーの中に入れ、スイッチを押す。
粉々に砕けて、形が無くなって行く林檎をボーっと眺める。
そんなハルヒを見て、は微笑んだ。
(なんか和むな〜…)
心の中でそう呟くと、手に持っていたパパイヤをハルヒに渡した。
「ハルヒ、これも入れて」
「分かりました。」
返事をして、果物を受け取る。
次々に取り出して来た果物の皮を剥いてはハルヒに渡した。
その作業を何回か繰り返した後で、は包丁を置いた。
ミキサーの中に砂糖を入れ、スイッチを押して更にかき混ぜさせる。
ジェラート状になった液体を、色々な形になっている入れ物に流し込む。
それをトレイに並べて、冷蔵庫の中へ入れた。
「これでよし…と。1時間かかるけどな。」
「何が出来るんですか?」
「それは出来てからのお楽しみだよ、ハルヒ」
「はぁ…」
素直に聞いてくるハルヒに笑って、は人差し指を唇に当てた。
その後に、は不思議そうな顔をしているハルヒの頭をポンポン、と叩いた。
「さぁ、残りを仕上げようか」
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「お待たせー。皆、下に降りてきて」
「分かった。」
あの後、残りを仕上げたとハルヒは、環たちを呼びに部屋に戻って来た。
返事をしたのは鳳だけで、残りの者は目を輝かせての前に出た。
「待ちくたびれたぞ!!!」
「ごめんって。そんなに時間かかってた?」
「そんなことないよ〜。ちゃんたち、かなり早かったよ〜?ね、崇?」
「……そうだな。」
「「殿、少しくらい我慢しよーよー」」
「うるさい!早くの料理が食べたかったんだ!俺は!」
「「まぁ、その意見には賛成だけどねー」」
「…ごめん。今度からはもっと早くするよ。」
ガバっと肩を掴まれ、ドアップで言ってくる環に少し引きつつ、はなんとか言った。
近過ぎる環になんとか離れてもらい、は息を吐き出した。
「皆、付いてきて。案内するから」
そう言うと、先に部屋を出て先頭に立って誘導する。
ぞろぞろと部屋から出てくると、一行はの後を付いていった。
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「さぁ、着いたよ。」
「おお!」
「「すげー」」
は一行を引き連れてテラスにやってきた。
既に飾り付けをしてあるテーブルへと、移動させる。
全員席についたのを確認して、も座った。
「さて…皆の口に合うか分からないけど。」
「合うに決まってるではないか!の料理は美味いからな。」
「「そーそー。いただきまーす」」
「クス。どうぞ。」
手を合わせて言い、食べ始める双子を見て、は笑った。
双子に先を越されてしまった環が、しまった!という顔をして、すぐに食べ始める。
鳳と埴之塚、銛之塚もお箸を手に持ち食べ始めた。
「おぉ!これは美味だな!」
「あぁ。それはハルヒが作ったんだよ。俺のはこれとこれ。」
「何!?ハルヒ〜v美味しいよ〜v」
「……そうですか」
「環…キモイからやめなよ」
は横に座っていたハルヒを引き寄せ、正面に座っている環を非難の目で見た。
何か言おうとした環を無視して、は立ちあがり、キッチンへと姿を消す。
再び姿を見せたの手には、トレイが握られていた。
「、それは?」
「あ、鏡夜。配るの手伝ってくんない?」
「…それはいいが。」
鳳が声をかけると、は笑って頼んだ。
快く了承してくれた鳳に感謝しつつ、うるさい方を見やった。
「……あの人達どうしたの?」
「…お前のせいだろう?」
「俺?」
「あぁ。特に、環がうるさいのはさっきのお前の行動だな。」
と一緒の方向を見た鳳が嘆息した。
鳳の言葉に疑問符を浮かべるだったが、特に問い詰めることもなく鳳から視線を外した。
ハルヒの座っている横で一人大声を張り上げている環と、迷惑そうな顔をしているハルヒがの視界に入る。
「環。もういいでしょ?ハルヒもウザそうな顔してるし…デザート食べようよ?」
「うわーいv何々〜?」
「俺特製のフルーツゼリーだよ、ハニー先輩。」
ピョコ、と”デザート”という単語に飛びついて来た埴之塚には微笑んだ。
手にしたカップを、スプーンと一緒に埴之塚に手渡す。
目に見えて分かるくらい満面の笑みで喜んだ埴之塚は、銛之塚の元へと走っていった。
その後姿を微笑ましく見つめて、はハルヒに近づいた。
「はい、ハルヒ。これがさっきのデザートの正体だよ。」
「……美味しそう…」
「だろ〜?実際美味しいんだけどな。」
「「いいなー。先輩、僕等にも〜」」
「はいはい。双子は鏡夜から貰ってよ。俺の方はもう自分の分しか残ってないし」
「「ちぇー。鏡夜せんぱーい。ゼリー僕等にくださーい」」
「あぁ。お前達が最後だよ。」
鳳に手渡されたカップを受け取り、早々と食べ始める双子。
銛之塚と環にも渡した後に、鳳も食べ始めた。
「おいし〜v」
「ひんやりしてますね。」
「馨、食べさせてやろうか?」
「え…そんな、皆の前で……」
「はいはい。そこぉー、ホモ禁止ー。」
「「ちぇー」」
目を離すとすぐこれだ。
人の家で何を始める気だ、お前等…
は腰に手を当てて、嘆息した。そして注意する。
注意され、つまんなそうに返事をした双子を、じっと見つめる。
「…まぁいいか。そういえば…そろそろ寝るところの準備もしないとな。」
「俺も手伝おうか?」
「あ、鏡夜。有難う。お願いしてもいい?」
「もちろんだ。世話になるんだからね。」
三人で1つの部屋に寝てもらおうかな…あ、ハルヒは別か。
はうーん…と唸った。が、すぐに振り分けを済ませてしまう。
「じゃあ、環と双子、ハニー先輩とモリ先輩と鏡夜でいいよな?」
「いいんじゃないか?常陸院兄弟と環が一緒というのが、気にかかるが…」
「だって、双子と先輩たちは一緒じゃないと駄目だろ?ハルヒは女の子なんだし…」
「…まあ、妥当な振り分けかもな。」
「だろ?」
正論を言われ、鳳は口篭もるように言った。
振り分けが終われば、後は準備するだけだ。
はさっさと食器を片付けると、それを流しに持っていった。
「あの…先輩」
「ん?ハルヒ、どうした?」
流しで皿を洗っていたの元に、環たちと一緒に居た筈のハルヒが来た。
言い難そうに言葉を濁したハルヒを、不思議そうに見つめる。
出しっぱなしにしていた水を止め、手を拭いてハルヒに向き直る。
「…自分も泊まってもいいですか?」
「あ?そんなの、当たり前だろ?元々、そのつもりだったんだし」
「そうなんですか?」
「おう。何、ハルヒ。そんな事心配してたの?大丈夫だよ。部屋はあいつ等とは別にするし。」
の言葉に意外そうな顔をしたハルヒを見て、は可笑しそうに笑った。
「さっき、言い損ねたので。」
「…あぁ。最初に俺が聞いた時ね。いいよ、あれは最終確認。皆がなんていうか想像ついてたし。」
「…付き合い長いんですね」
「まあな。」
そういっては笑った。
一通り話し終え洗い物を済ませたは、ハルヒと共にテラスに戻ると環たちを部屋へと案内した。
そうして、それぞれの夜は更けて行った。
**途中コメント**
無駄に長くなってしまった…(汗)
なんだか余計なこと書きすぎたみたいで…でも削除できないし…
次からはX’masの続きに戻ります。
06,2,23