「今日はどんな営業にするの?鏡夜」
「そうだな…夏らしいものにするか」
「…え?」
ニヤリ、と笑った鳳を見たは、悪い事が起きるんじゃないかと
直感で思った――
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「「「「「いらっしゃいませ。今日もよろしくv」」」」」
鳳の企みが明らかになってしまったホスト部は、今日も威勢良く始まった。
「環さま、環さま。今日もよく似合っておられますわvv」
「そうかな?姫の方がお似合いになっていると、俺は思うけどな。」
「環さま…」
「やっぱり、光くんと馨くんはお揃いなんですわねv」
「素敵ーv」
「「アリガトーv」」
「今日のも全部うちの母がデザインした奴なんだ。今回も注文承ってマス」
「例によって、着付けは祖母だけどねー」
「あの、鏡夜様。新しい写真集はまだなんでしょうか…?!」
「スミマセン。今選りすぐりを選んでおりますので、もう暫くお待ち下さい。
…あぁ、うちのプロが撮った今さっき出来あがった、本日の衣装での全員分の写真ならばありますが…?」
「「「買ったァァァ!!」」」」
「ねーねーv今日の僕の衣装、可愛いでしょーv」
「えぇ!!すごく可愛いですわ、ハニー先輩!」
「えへへー、嬉しいーvねー崇ーv」
「……(コクリ)」
「モリ先輩も素敵ですわ!!!」
「何も言わないところがまたいいんですわよね…っ!!」
「ハルヒくーんvv今日も可愛いーv」
「本当。女の子みたーいvv」
「あはは、どーも…(女の子みたいって…)」
「様も素敵ですわ!!」
「有難う。でも、姫たちの方が素敵だよ?」
「「きゃーー!!」」
始まった途端に女子生徒たちから囲まれたホスト部メンバー達。
各自お得意のやり方で女子生徒たちの相手をし始める中で、も例外なく相手をしていた。
ニッコリと優しく微笑んだに、女子生徒たちの黄色い悲鳴が上がった。
(……嬉しいけど、なんか複雑…)
キャーキャー喜んでいる女子生徒たちを前に、は苦笑した。
「……なぁ、鏡夜。夏らしいといえば夏らしいけど…」
「ん?どうした、」
「…その爽やかな笑顔がムカツクんですけど?」
「そう言われてもこの顔は生まれつきだからな。そう言われても困るから、気にするな。」
「あっ…そ。…じゃなくて!ハニー先輩やハルヒはともかく、なんで俺までこの格好なわけ?」
「いいじゃないか。ウケもいいし、何より似合っているぞ。」
「嬉しくないんだけど…」
爽やかな(鳳をよく知る人物には黒く見える)笑顔で言ってきた鳳に、はため息をついた。
不満たらたらの顔で鳳を見上げているは、女物の作りによく似た浴衣を着ていた。
柄こそ控えめであるが、帯を締め、長くなってきた髪は上の方で結っているは、傍から見れば女に見えているかもしれない。
着た後で鏡の前に立ったは、任せるんじゃなかった…と既に落ち込んでいたのだった。
しかし、女子生徒の前に出てしまった以上、諦めるしかないとは思った。
本日のホスト部は、全員それぞれに合っているであろう浴衣を着ていた。
お客様である女子生徒たちも皆、自前の浴衣を着込んで今日は部に遊びにきていた。
ホスト部の部室である音楽室の扉には、【本日浴衣祭につき、浴衣着用者以外立ち入り禁止】の張り紙が貼られている。
これが鳳が仕組んだ、本日の営業のやり方である。
「…あ、そうそう。コレ、さっき調理室を借りて作ってみたんだけど」
「ん?…ほぉ、美味そうだな」
「だろ?部が終わった後、皆で食べようか。」
「そうだな。双子や環が喜びそうだな。」
「…ハニー先輩じゃなくて?」
「あの人は言わずもがなって奴だろう?」
「……確かに」
思い出したように、は言った。
それに口の端を上げて笑った鳳に、も苦笑しながら同意した。
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「皆、今日はお疲れ様」
部の営業時間も終わり、浴衣から制服に着替えた一同はソファに座ってグッタリしていた。
営業時間中は、女子生徒たちとの写真撮影会をしたり接客業をこなしたりと、いつも以上に忙しかったような気がする…
これも浴衣効果だったのかなんなのか、原因は不明なのだが。
は苦笑しながら、テーブルに先ほど鳳と言っていたモノを並べた。
「「何々ー?デザートォ?先輩の手作りー?」」
「そう。今日、部が始まる前にちょっと作ってきたんだ。皆、終わったら疲れてるだろうと思ったから」
「わーい♪ちゃんのデザートだぁ!」
「なんだか…綺麗ですね。」
「おお!、凄いではないか!」
「そう?これくらい普通だと思うけど……さ、冷たいうちに食べてね。」
ハート乱舞で抱きついてこようとした環をサっとかわして、何事も無かったかのようには言った。
シュン…と落ち込んだ環だが、誰にも相手にされないことに気づくと肩を落としたまま、大人しく双子の横に腰を下ろした。
呆れながら環の動作を見て、は苦笑した。
そして、全員座ったのを確認したところで、も鳳の横の空いている場所へと腰を下ろした。
「わーい!いただきまーす!!」
「どーぞ♪」
「「…うわっ、めちゃくちゃ美味いじゃん!」」
「本当だ。おいしい…」
「うむ!冷たくて、実に夏には持ってこいのデザートだな!」
「…また一段と腕を上げたんじゃないか?」
「ちゃん、おいしいーvv」
「……美味い」
「有難う、皆。そう言ってもらえて良かった…まだあるから、おかわりしてくれよな」
絶賛しながら次々と食べ進める環たちを見ながら、は笑った。
空になっていく容器を片しながら、冷蔵庫から新しいのを取り出してくる。
その作業を何度か続けていると、ふと声がかかった。
「」
「…あ、鏡夜。何?」
「お前も座って食べるといい。後は俺がやろう。」
「え?でも…」
「遠慮することはない。お前も疲れているだろう?ほら」
冷蔵庫を閉めて振り向くと鳳が立っていた。
ポンっと背中を押されて、環たちが座っている方へと向かせられる。
鳳を振り返って仰ぎ見るが、鳳は笑って「行け」とただ一言だけ言った。
は苦笑して、背を向けた鳳に向けて感謝の言葉を口にした。
何も返事しない鳳にまた笑みを零しながら、は環達の方に足を向け、歩を進めた。
Fin
久々に書いたホスト部。皆何気に口調がずれてしまっています;
しかも話が掴み難い…;
06,9,10