「今日はどんな営業にするの?鏡夜」
「そうだな…夏らしいものにするか」
「…え?」

 

 

 

ニヤリ、と笑った鳳を見たは、悪い事が起きるんじゃないかと

 

直感で思った――

 

 

 

***********

 

 

 

「「「「「いらっしゃいませ。今日もよろしくv」」」」」

 

 

 

鳳の企みが明らかになってしまったホスト部は、今日も威勢良く始まった。

 

 

 

「環さま、環さま。今日もよく似合っておられますわvv」
「そうかな?姫の方がお似合いになっていると、俺は思うけどな。」
「環さま…」
「やっぱり、光くんと馨くんはお揃いなんですわねv」
「素敵ーv」
「「アリガトーv」」
「今日のも全部うちの母がデザインした奴なんだ。今回も注文承ってマス」
「例によって、着付けは祖母だけどねー」
「あの、鏡夜様。新しい写真集はまだなんでしょうか…?!」
「スミマセン。今選りすぐりを選んでおりますので、もう暫くお待ち下さい。
 …あぁ、うちのプロが撮った今さっき出来あがった、本日の衣装での全員分の写真ならばありますが…?」
「「「買ったァァァ!!」」」」
「ねーねーv今日の僕の衣装、可愛いでしょーv」
「えぇ!!すごく可愛いですわ、ハニー先輩!」
「えへへー、嬉しいーvねー崇ーv」
「……(コクリ)」
「モリ先輩も素敵ですわ!!!」
「何も言わないところがまたいいんですわよね…っ!!」
「ハルヒくーんvv今日も可愛いーv」
「本当。女の子みたーいvv」
「あはは、どーも…(女の子みたいって…)」
様も素敵ですわ!!」
「有難う。でも、姫たちの方が素敵だよ?」
「「きゃーー!!」」

 

 

 

始まった途端に女子生徒たちから囲まれたホスト部メンバー達。

各自お得意のやり方で女子生徒たちの相手をし始める中で、も例外なく相手をしていた。

ニッコリと優しく微笑んだに、女子生徒たちの黄色い悲鳴が上がった。

 

 

(……嬉しいけど、なんか複雑…)

 

 

キャーキャー喜んでいる女子生徒たちを前に、は苦笑した。

 

 

 

「……なぁ、鏡夜。夏らしいといえば夏らしいけど…」
「ん?どうした、
「…その爽やかな笑顔がムカツクんですけど?」
「そう言われてもこの顔は生まれつきだからな。そう言われても困るから、気にするな。」
「あっ…そ。…じゃなくて!ハニー先輩やハルヒはともかく、なんで俺までこの格好なわけ?」
「いいじゃないか。ウケもいいし、何より似合っているぞ。」
「嬉しくないんだけど…」

 

 

 

爽やかな(鳳をよく知る人物には黒く見える)笑顔で言ってきた鳳に、はため息をついた。

不満たらたらの顔で鳳を見上げているは、女物の作りによく似た浴衣を着ていた。

柄こそ控えめであるが、帯を締め、長くなってきた髪は上の方で結っているは、傍から見れば女に見えているかもしれない。

 

着た後で鏡の前に立ったは、任せるんじゃなかった…と既に落ち込んでいたのだった。

しかし、女子生徒の前に出てしまった以上、諦めるしかないとは思った。

 

本日のホスト部は、全員それぞれに合っているであろう浴衣を着ていた。

お客様である女子生徒たちも皆、自前の浴衣を着込んで今日は部に遊びにきていた。

ホスト部の部室である音楽室の扉には、【本日浴衣祭につき、浴衣着用者以外立ち入り禁止】の張り紙が貼られている。

 

これが鳳が仕組んだ、本日の営業のやり方である。

 

 

 

「…あ、そうそう。コレ、さっき調理室を借りて作ってみたんだけど」
「ん?…ほぉ、美味そうだな」
「だろ?部が終わった後、皆で食べようか。」
「そうだな。双子や環が喜びそうだな。」
「…ハニー先輩じゃなくて?」
「あの人は言わずもがなって奴だろう?」
「……確かに」

 

 

 

思い出したように、は言った。

それに口の端を上げて笑った鳳に、も苦笑しながら同意した。

 

 

************

 

 

 

「皆、今日はお疲れ様」

 

 

 

部の営業時間も終わり、浴衣から制服に着替えた一同はソファに座ってグッタリしていた。

 

営業時間中は、女子生徒たちとの写真撮影会をしたり接客業をこなしたりと、いつも以上に忙しかったような気がする…

これも浴衣効果だったのかなんなのか、原因は不明なのだが。

 

は苦笑しながら、テーブルに先ほど鳳と言っていたモノを並べた。

 

 

 

「「何々ー?デザートォ?先輩の手作りー?」」
「そう。今日、部が始まる前にちょっと作ってきたんだ。皆、終わったら疲れてるだろうと思ったから」
「わーい♪ちゃんのデザートだぁ!」
「なんだか…綺麗ですね。」
「おお!、凄いではないか!」
「そう?これくらい普通だと思うけど……さ、冷たいうちに食べてね。」

 

 

 

ハート乱舞で抱きついてこようとした環をサっとかわして、何事も無かったかのようには言った。

シュン…と落ち込んだ環だが、誰にも相手にされないことに気づくと肩を落としたまま、大人しく双子の横に腰を下ろした。

 

呆れながら環の動作を見て、は苦笑した。

そして、全員座ったのを確認したところで、も鳳の横の空いている場所へと腰を下ろした。

 

 

 

「わーい!いただきまーす!!」
「どーぞ♪」
「「…うわっ、めちゃくちゃ美味いじゃん!」」
「本当だ。おいしい…」
「うむ!冷たくて、実に夏には持ってこいのデザートだな!」
「…また一段と腕を上げたんじゃないか?
ちゃん、おいしいーvv」
「……美味い」
「有難う、皆。そう言ってもらえて良かった…まだあるから、おかわりしてくれよな」

 

 

 

絶賛しながら次々と食べ進める環たちを見ながら、は笑った。

空になっていく容器を片しながら、冷蔵庫から新しいのを取り出してくる。

 

その作業を何度か続けていると、ふと声がかかった。

 

 

 


「…あ、鏡夜。何?」
「お前も座って食べるといい。後は俺がやろう。」
「え?でも…」
「遠慮することはない。お前も疲れているだろう?ほら」

 

 

 

冷蔵庫を閉めて振り向くと鳳が立っていた。

ポンっと背中を押されて、環たちが座っている方へと向かせられる。

鳳を振り返って仰ぎ見るが、鳳は笑って「行け」とただ一言だけ言った。

 

は苦笑して、背を向けた鳳に向けて感謝の言葉を口にした。

何も返事しない鳳にまた笑みを零しながら、は環達の方に足を向け、歩を進めた。

 

 

 

Fin

 

久々に書いたホスト部。皆何気に口調がずれてしまっています;
しかも話が掴み難い…;

06,9,10